分類学では,種などの分類群を正しく類別し,それらに対して適用すべき学名を決めていく。その過程で,学名を持たない種が見つかることがある。いわゆる新種である。新種はまだ著作物に記載されていないので,未記載種(undescribed species)ともいう。新種が見つかるのは偶然の要素が多く,狙って見つかるものではないし,新種を見つけることだけが分類学的研究ではない(これは強調しておきたい)。とは言うものの,新種が見つかればそれだけで論文を書くことができるし,新学名をつける「名誉」が与えられるので,分類学者にとっては確実にうれしいことではある。新種の命名者として自分の名前が歴史に残ることにもなる。
個人的には,酷似する2種の違いを精査し,誰も気づいていなかった分類形質を見つけ,簡便な識別方法を確立するとか,眼窩径や両眼間隔などの計測値に見られる成長変異を分類形質に応用するとか,むしろ地味に思われるような研究が大好きなのだが,こういう研究と比べると新種の公表は成果もわかりやすく,多くの人の関心を引くことのできる,「華」のある研究かもしれない。
上述のとおり,新種は狙って見つかるものではないので,発見するまで時間がかかることもあるだろうが,こつこつと地道な研究を行っていれば,それだけ見つける機会も増えることになる。私の場合,これまで37種の新種の公表に関わり,このうち私自身が発見した新種は27種である(残りは共著者が主導した研究)。そんな経験から,ていねいに研究を行えば高確率で新種と出合えると言っておきたい。
あなたも,この研究分野に飛び込み,新種を見つけてみませんか?