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    • 誤差の伝搬(正式版)の復習


       数値x1, x2, ,,,,, xn が、誤差をそれぞれ、σ1, σ2, ,,,,,,, σn  を持ちます。

       演算 f をしたときの誤差σ  は、以下の式で表されます。


         σ =  ±   



    • 応用問題1)

       電子天秤でヨウ素酸カリウムを10.0 mg量り採り、メスフラスコ(100mL)に入れた。メスフラスコの標線まで水を入れて(メスアップして)、完全に溶かしてよく混ぜた。この溶液をホールピペット(10.0mL)で量り採ったとき、溶液10mL中に含まれる溶質の質量を誤差を含めて計算せよ。なお、天秤と各容量器具の精度は以下の通りである。

       

      精密電子天秤の精度            :±0.05mg

      ホールピペット(10mL)の精度:±0.02mL

      メスフラスコ(100mL)の精度   :±0.12ml

       

       ヨウ素酸カリウム(10.00±0.05mg)をメスフラスコの水(100.0±0.12mL)で溶解させたときの溶液の重量濃度は、(10.00±0.05mg)/(100.0±0.12mL) mg/mLである。

       

      割り算の誤差計算の公式より、






    • 応用問題2)

       チープな電子天秤でヨウ素酸カリウムを10 mg量り採り、メスフラスコ(100mL)に入れた。メスフラスコの標線まで水を入れて(メスアップして)、完全に溶かしてよく混ぜた。この溶液をホールピペット(10.0mL)で量り採ったとき、溶液10mL中に含まれる溶質の質量を誤差を含めて計算せよ。なお、天秤と各容量器具の精度は以下の通りである。

       

      チープな電子天秤の精度 ±0.5mg

      ホールピペット(10mL)の精度:±0.02mL

      メスフラスコ(100mL)の精度   :±0.12ml

       

       ヨウ素酸カリウム(10.0±0.5mg)をメスフラスコの水(100±0.12mL)で溶解させたときの、溶液の重量濃度は、(10.0±0.5mg)/(100±0.12mL) mg/mLである。

             ヨウ素酸カリウム溶液の重量濃度:0.100±0.005 mg/mL

       

      この溶液を10.0±0.02 mL量り採って含まれる溶質質量は、

      0.100±0.005 mg/mL)×(10.0±0.02 mL)= 1.00 ±0.05 mg

      と計算される。

             (有効数字の桁数は2桁、有効数字の最小の位は小数点第1位である)

      天秤の精度の悪さが、計測結果の精度に反映された。





    • 応用問題3)

       超高精度な電子天秤でヨウ素酸カリウムを10.000 mg量り採り、メスフラスコ(100mL)に入れた。メスフラスコの標線まで水を入れて(メスアップして)、完全に溶かしてよく混ぜた。この溶液をホールピペット(10.0mL)で量り採ったとき、溶液10mL中に含まれる溶質の質量を誤差を含めて計算せよ。なお、天秤と各容量器具の精度は以下の通りである。

       

      超精密な電子天秤の精度 ±0.0005mg

      ホールピペット(10mL)の精度:±0.02mL

      メスフラスコ(100mL)の精度   :±0.12ml

       

       ヨウ素酸カリウム(10.0±0.0005mg)をメスフラスコの水(100±0.12mL)で溶解させたときの、溶液の重量濃度は、(10.000±0.0005mg)/(100±0.12mL) mg/mLである。

             ヨウ素酸カリウム溶液の重量濃度:0.100±0.00012 mg/mL

       

      この溶液を10.0±0.02 mL量り採って含まれる溶質質量は、

      0.100±0.00012 mg/mL)×(10.0±0.02 mL)= 1.0000 ±0.0023 mg

      と計算される。

       

      例題1)では、天秤精度が±0.05で、1.0000 ±0.0055 mgの結果が得られた。

      例題2)では、天秤精度が±0.5 で、1.00    ±0.05 mgの結果が得られた。

      例題3)では、天秤精度が±0.0005 で、1.0000 ±0.0023 mgの結果が得られた。

       

      例題1)の天秤に比べて、例題3)では100倍も高精度な天秤を使ったのに、誤差は半分にしか減らなかった。

      100倍も高精度な天秤は、お値段は100倍以上もするでしょう。



    • 応用問題4)

       精密電子天秤でヨウ素酸カリウムを50.0 mg量り採り、メスフラスコ(500mL)に入れた。メスフラスコの標線まで水を入れて(メスアップして)、完全に溶かしてよく混ぜた。この溶液をホールピペット(10.0mL)で量り採ったとき、溶液10mL中に含まれる溶質の質量を誤差を含めて計算せよ。なお、天秤と各容量器具の精度は以下の通りである。

       

      精密電子天秤の精度           :±0.05mg

      ホールピペット(10mL)の精度:±0.02mL

      メスフラスコ(500mL)の精度  :±0.3ml

       

       ヨウ素酸カリウム(50.0±0.05mg)をメスフラスコの水(500±0.3mL)で溶解させたときの、溶液の重量濃度は、(50.0±0.05mg)/(500±0.3mL) mg/mLである。

             ヨウ素酸カリウム溶液の重量濃度:0.1000±0.000117 mg/mL

      この溶液を10.0±0.02 mL量り採って含まれる溶質質量は、

      0.1000±0.000117 mg/mL)×(10.0±0.02 mL)= 1.0000 ±0.0023 mg

      と計算される。

       天秤に量り取る量を増やし、容量の大きなメスフラスコを使うと、同じ電子天秤でも、例題1)よりも2倍も精度よく量り採れた。これは、例題3)で100倍も高精度の天秤を使った時と同じ精度である。要領よくすれば、高精度な分析が可能になることがわかる。

       

       上に挙げた測定器具の精度とは、最高の状態のホールピペットを、ピペットのプロが量り採ったときの値である。ガラス器具を適切に扱った場合に保証される精度であって、ピペットが汚れていたり、腕前が未熟だったりすると、その精度は格段に落ちてしまう。