Topic outline
ガスクロマトグラフィー(概要)
ガスクロマトグラフィーは、気相中の成分をカラムで分離する手法です。原理はイオンクロマトグラフィーと同じです。ガスクロマトグラフィーでも分離カラムを使います。試料ガスに含まれる有機物を分離することが多いです。カラムとしては、最近は、キャピラリーカラムを使うことがほとんどです。
キャピラリーカラムとは、直径(外径)が1 mm以下、内径が100 μmなどの非常に細く、50 mほどの長い管です。内壁の材質はいろいろありますが、溶融シリカがよく使われているようです。分子(ガス状)がシリカに吸着する性質があるからです。分子の種類によって、吸着力が違うので、キャピラリーカラムによって分離することができるのです。
下の絵では、有機物成分として、低分子の有機ハロゲンガスを例に示しました。カラムで分離して、下流の検出器で信号強度を得るのは、先のコース(イオンクロマトグラフィー)で説明したのと同じです。
ガスクロマトグラフの検出器
電子捕獲器(Electron Capture Detector: ECD)
有機物分析で高感度なのが、電子捕獲器を使う方法です。放射線源から常にベータ線を放出させます。ベータ線が窒素分子にあたると、電子が発生します。その電子を電極で吸い寄せて、電子の数を計測します。これが、ベースラインです(下図の左)。
ガスクロマトグラフのキャピラリーから出てきた有機物分子をECDに導入します。電子が有機物分子(薄青色の丸)に衝突すると、その荷電粒子は重たいので電極に到達できません。有機物分子が多いと、電極に吸い寄せられる電子が減るので、ピークとして検出されます。
ECDは、装置が単純(比較的安価)で高感度なのが長所ですが、下の絵のように、有機物成分が分離しきれていないと、分析ができません。
質量分析器(Mass Spectrometry: MS)
ガスクロマトグラフのキャピラリーから出てきた有機物分子に、熱電子をぶつけます。すると、有機物分子は帯電して荷電粒子となります。電荷を帯びているので、磁場により移動させることができます。また、有機物分子は質量をもちます。その質量に応じて、磁場により動かされる速度が決まります。磁場を微妙に調整しながら、磁場を通り抜けることができる質量の荷電粒子だけを検出器(電子増倍管:Electron multiplier tube)に導入して信号強度を得ます。 キャピラリーを通過した分子を質量別に検出できるので、質量分析計といいます。(有機物に限らず、無機物も質量分析できます)
分子に熱電子をぶつけると、分子は壊されて、様々な質量をもつ破片(荷電粒子)になります。有機物分子の成分ごとに、どのような確率でどのような質量の破片になるか調べられています。それがライブラリーとして提供されているので、質量分析の結果から、成分を推定することができるのです。