Diagrama de temas
クロマトグラフィー(概要)
クロマトグラフィーとは、化学成分の吸着と脱離の性質を利用した分離手法のことです。炭酸カルシウムを充てんしたカラムに石油エーテルを流すと、色の異なる吸着帯として分離されたことが、クロマトグラフィーのはじまりです。このことから”色の記録”という意味で、ギリシャ語のChroma(色)とGraphos(記録)より Chromatography(クロマトグラフィー)と呼ばれるようになりました(西川計測のHP情報より引用)。
クロマトグラフとは、クロマトグラフィーの装置のことです。
クロマトグラムとは、クロマトグラフ(装置)により分離計測された、信号強度の時系列変化図です(あとで説明します)。
イオンクロマトグラフィーは、水中のイオン成分を分離・分析する手法です。
ガスクロマトグラフィーは、気相中の成分を分離・分析する手法です。
下に、イオンクロマトグラフィーを例に、分離分析のイメージを示します。水に、複数種類の成分が混ぜます。複数種類を色の違いで表現しています。混ざってしまうと。何の成分がどれだけ入っているのか分かりません。混合溶液をイオン交換樹脂カラムに通します。成分ごとにカラムを通過する時間が異なることを利用して、カラムから出てきたときには成分ごと(色ごと)に分離するのです。液体の流れに沿って成分が分離されていて、その下流に検出器を置きます。その信号強度をモニターすれば、各成分の濃度を定量できる仕組みです。
検出器の種類は様々です。イオンクロマトグラフィーであれば、一番シンプルなのが電気伝導度です。濃いイオン成分が流れてくれば、電気伝導度が上がります。蛍光検出器もあります。光を吸収して蛍光を発する成分を高感度で検出することができます。
イオンクロマトグラフィー
イオンクロマトグラフィーの利用例(降水中のイオン成分測定)を下に記します。空から降ってくる雨粒には、様々なイオン成分が溶け込んでいます。自然由来としては、硫酸イオン(火山や海洋植物が発生源)、カルシウムイオン(炭酸カルシウム鉱物が発生源)、ナトリウムや塩化物イオン(海水の塩類が発生源)があります。人為汚染物質として、硫酸(石炭燃焼由来)や硝酸(自動車排ガス由来)などがあります。大気の汚染状況や気象現象を理解するにも、雨粒中のイオン成分を調べる必要があります。雨水を集めて、ろ過してから、イオンクロマトグラフに試料水を導入します。
下の絵に、イオンクロマトグラフで陰イオンを分析する際の液の流れを示します。
① イオンクロマトグラフの陰イオン分離カラムには、常に弱アルカリ性の溶離液を流しています。試料水が導入される前にイオン交換樹脂の表面を水酸化物イオンで覆っておくためです。
② カラムより上流から試料水を導入します。下の絵の青色で塗ったところが試料水です。試料水には水酸化物イオン(OH-)はあまり含まれず、塩化物イオン(Cl-)や硝酸イオン(NO3-)が含まれます。これらを下流のイオン交換樹脂カラムで分離します。
③ 塩化物イオン(Cl-)や硝酸イオン(NO3-)を含む水がカラムに入ると、樹脂との吸着力が弱い塩化物イオン(Cl-)は先に流れ、吸着力の強い硝酸イオン(NO3-)は遅れて流れます。
④ 試料水に含まれるイオン成分よりも、先にでてくるのが、試料水の水成分です。イオン交換樹脂に吸着されることなくを素通りするからです。
⑤ 試料水の水成分が流れた後は、再び溶離液(弱アルカリ性)が流れてきます。試料水に含まれていた塩化物イオン(Cl-)、硝酸イオン(NO3-)の順に分離されて、溶離液とともに流れ出てきます。
⑥ 試料水のイオン成分が流れ出た後は、再びイオン交換樹脂が水酸化物イオン(OH-)に覆われるので、次の分析が可能な状態になります。
この陰イオン交換カラムの下流に検出器を置きます。ここでは電気伝導度計を置いてあります(下の絵の赤矢印)。
⑥ 電気伝導度は、弱アルカリ性の溶離液が流れているときも、常にモニターしています。溶離液だけのときの電気伝導度が10でした。これがクロマトグラムのベースラインになります。
⑦ 試料水を導入すると、一番初めに、試料水の水成分が流れ出てきます。これは、溶離液よりも、真水に近いので、電気伝導度が下がります。ベースラインに対して、負のピークとして検出されます。これを「溶媒ピーク」といいます。
⑧ 溶媒ピークのあとは、一旦、溶離液のベースラインの電気伝導度に戻りますが、続いて、試料水にあったイオン成分が分離されて出てきます。吸着能力の小さな塩化物イオン(Cl-)が出てきました。溶離液にCl-が加わったので、電気伝導度が上昇します。クロマトグラムで正のピークとして検出されます。
⑨ 塩化物イオン(Cl-)のあとは、再び溶離液ベースに戻って、つづいて、硝酸イオン(NO3-)のピークが検出されます。
最後のイオン成分が流れ出たあとは、溶離液のベースラインにもどります。
(下の絵では、硝酸イオンを最後に描いていますが、実際には、硫酸イオンやリン酸イオンが後から出てくることがあります)
陰イオン分離カラムの流れの絵の下に、クロマトグラムの例を示しました。横軸が時間です。試料水を導入したときを、時刻ゼロとして、左方向に時間が進むように描いています。試料導入から、まず、溶媒ピークとして負のピークが現れます。溶離液ベースに戻ってから、Cl-やNO3-のピークが出てきます。
試料水中に含まれていたイオン成分の量に比例して、クロマトグラムの各成分ピークの高さや面積が変わります。イオンクロマトグラフィーでは、ベースラインを底としたピーク面積を信号強度とすることが多いです。
カラム容量の飽和(定量上限)
どんな分析手法でも、定量上限は存在します。クロマトグラフィーでは、カラム容量により定量上限が決まります。(それ以外に、検出器の容量オーバーによる定量上限もあります)
イオンクロマトグラフィーを例にして説明します。カラムに充てんされているイオン交換樹脂の表面で保持できるイオンの量には上限があります。イオン交換樹脂を増やせば、交換容量は大きくできますが、大きくすると感度や精度が落ちることになります。より高感度、より高精度にするなら、なるべく小さなカラムにするのが理想です。
導入した試料水中にイオン成分が過剰に含まれていれば、カラムのイオン交換容量をオーバーしてしまいます。保持できない分は、そのまま流れてしまうので、分離不能になってしまいます。