内部エネルギーに内在する束縛エネルギー(補足)
高校か大学一年で物理をかじっていれば、“内部エネルギー”というワードは聞いたことがあるでしょう。しかし、内部エネルギーの定義までシッカリ説明されてなかったか、忘れているかもしれません。ここでは内部エネルギーの定義と概念だけを説明します。
「内部エネルギーは、系を構成する分子の運動エネルギーの総和である」
質量mの分子が速度vで移動していれば、その分子一個の運動エネルギーは1/2・mv2です。ある体積の箱の中に分子n個が閉じ込められていれば、運動エネルギーの総和は1/2・nmv2です。速度vで移動する分子たちは壁に衝突して力積(2mv)を与えます。単位時間・面積当たりの力積が圧力(P)に等しい。運動エネルギーの総和(U=1/2・nmv2)をPVで表したのち、気体の状態方程式(PV=nRT)よりRTに変換すると、「内部エネルギーは温度に比例する」という面白い結果が得られます。これを式にすると以下。
U
= 1/2Σmv2 = ・・・ = 3/2RT
「・・・」の計算は、それほど難しくないが、説明を省きます。(金原寿郎著・基礎物理学(上)など物理学の教科書に記されています)
ただ、「内部エネルギーが運動エネルギーの総和で、温度に比例する」と信じてくれれば、内部エネルギーには仕事して取り出せない束縛エネルギーが内在することをイメージしやすいです。
内部エネルギーに束縛エネルギーが内在することをイメージするための説明
1リットル
(1dm3)の牛乳パック空間に分子が
1023個(
1億
×1億
×1千万個)もあって、各分子が四方八方に
10km/sの猛スピードで運動していれば、分子同士が衝突して化学反応を起こし、何か仕事をしてくれそうです。
1万キロ立方メートルのお月さまサイズの箱に分子が
1023個しかなく、各分子が四方八方に
10km/sで運動している系と比べてみます。お月さまサイズの空間に分子が
1023個ある密度は、皆さんが住んでいる牢獄のようなアパートの一室(
10立方メートル)に分子が
10個しか飛んでいない密度に相当します。分子サイズは
0.1nm(ナノメートル)くらいなので、これほどスカスカでは、分子がいくら高速で動いていようと、分子同士が衝突して化学反応を起こすことは期待できません。牛乳パックとお月様サイズの空間に存在する分子の総運動エネルギー(内部エネルギー)は同じなのに、後者の内部エネルギーからは、化学変化の仕事を取り出すのが難しいです。つまり後者の内部エネルギーには、仕事として取り出せない“束縛エネルギー”の占める割合が多そうですね。(以上で内部エネルギーの補足説明はおわり)