主題大綱
化学平衡の基本式(復習)
化学平衡の基本式(覚えて使えるように)のコースでは、化学平衡になる条件を記しました。
//////////////// 化学平衡の基本式(復習) /////////////////////////
【原形】 【生成形】
aA + bB + … ⇆ xX + yY + …
平衡状態においては、以下の関係が成り立ちます。
Kを平衡定数とよび、この関係を質量作用の法則といいます。
[A], [B], [X], [Y]はこの反応の平衡濃度、a, b, …, x, y, …は反応モル比です。
ここで、
原形を構成する各物質の標準生成ギブズエネルギーの合計:ΣGf0原形
生成形を構成する各物質の標準生成ギブズエネルギーの合計:ΣGf0生成形
として、
反応前後における(生成形と原形を構成する物質の)標準生成ギブズエネルギーの合計差をとると、
⊿∑Gf0生成形-原形 = ΣGf0生成形 - ΣGf0原形
この反応が平衡状態にあれば、以下の関係を満たします。
⊿∑Gf0生成形-原形 = -R・T・lnK
気体定数R = 8.314、Tは絶対温度
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平衡状態ではないとき(どちらかの方向に反応が進むとき)
長々しく説明していますが、下へスクロールして、赤字で記したところだけ覚えればよいです。
物質A, B, X, Yが混在する系において、平衡状態ではないことも当然あります。
一般的(平衡とは限らず)に、原形や生成形にある物質のギブズエネルギーの合計は、
(標準状態で物質を合成するのに必要なエネルギー:標準生成ギブズエネルギー)+(物質を標準状態から任意の状態や濃度に変えるエネルギー)
で表されます。
物質を標準状態から任意の状態や濃度に変えるエネルギー= RT・ln(活量積) となります。
(式導出は、あとのコースで扱います)
ΣG原形 = ΣGf原形 + RT・ln(原形の活量積)
ΣG生成形 = ΣGf生成形 + RT・ln(生成形の活量積)
原形と生成形を構成する物質のギブズエネルギーの合計差(⊿∑G生成形-原形 )は、
⊿∑G生成形-原形 = ΣG生成形 - ΣG原形
= ( ΣGf生成形 + RT・ln(生成形の活量積)) - ( ΣGf原形 + RT・ln(原形の活量積))
= ΣGf生成形 - ΣGf原形 + RT・ln(【生成形の活量積】/【原形の活量積】)
= ⊿∑Gf0 + RT・ln(【生成形の活量積】/【原形の活量積】)
(⊿∑Gf0 :生成形と原形に存在する物質の標準生成ギブズエネルギーの差)
で与えられます。注1: ここで記している、【生成形の活量積】や【原形の活量積】は、平衡状態とは限らないときの任意の活量の積を意味します。
注2: 活量は馴染みが薄いので、とりあえず、「活量」=「濃度」 として進めてください。
平衡状態にあるときは
⊿∑G生成形-原形 = 0
のときでした。つまり、
⊿∑Gf0 = -RT・ln(【生成形の活量積】/【原形の活量積】)
を満たすときです。
平衡状態ではないとき、
⊿∑G生成形-原形 < 0 であれば、反応は、【原形】→ 【生成形】に進む。
⊿∑G生成形-原形 > 0 であれば、反応は、【生成形】→ 【原形】に進む
反応の進むとき条件を、平衡定数(K)を使って表します
~~~~~反応が【原形】→【生成形】に進むとき条件~~~~~~~~~
⊿∑G生成形-原形 < 0 のとき、反応は、【原形】→【生成形】に進む。
これを書きかえると、
⊿∑G生成形-原形 = ⊿∑Gf0 + RT・ln(【生成形の活量積】/【原形の活量積】)より、
⊿∑Gf0 + RT・ln(【生成形の活量積】/【原形の活量積】)< 0
のとき、反応は、【原形】→【生成形】に進む。
⊿∑Gf0 = -RT ・ln K だから、
lnK > ln(【生成形の活量積】/【原形の活量積】)
つまり、
【生成形の活量積】/【原形の活量積】< K
のとき、反応は、 原形→生成形 に進む。
逆に、
【生成形の活量積】/【原形の活量積】> K
のとき、反応は、 生成形→原形 に進む。
※ ここでいう【活量】(もしくは濃度)は、平衡状態とは限らないとき、ある系の物質の活量(もしくは濃度)である。
※ 【平衡状態における生成形の活量積】/【平衡状態における原形の活量積】=K だから、
平衡状態ではないとき、原形の活量積が大きくなれば、原形→生成形の反応が進み、
生成形の活量積が大きくなれば、生成形→原形の反応が進むと理解しておく。