問題1-3)の模範解答例①
(B)のピーク高は3.6・103で、回帰式より0.0037
(mg L-1)と定量されました。
(B)のピーク高は、標準試料のピーク高の範囲内に収まっているので、妥当なようにも思えます。しかし、濃度ゼロが期待されるブランク試料でも、ソコソコ大きなピーク高(1030)があるではないか。
ブランク試料でピークが出るということは、試料調整に用いた水にNO3-が混入していたか、実験室の空気からNO3-が混入したか、分析装置のラインにNO3-の汚染源があったか、何かしら問題がありそうです。このような不安を解消するため、必ずブランク試料を何回か測り、そのバラツキ(標準偏差)を求めておく必要があります。
(本来は、未知試料を分析する前に、ブランク試料や標準試料の繰り返し測定をして、その精度を確認しておくべきです)
そこで、ブランク試料(この場合、純水)を11個用意して、イオンクロマトグラフィーで測定し、その平均値と標準偏差を求めました。
ブランク試料(11個)の測定結果
ブランク試料のピーク高:1020,
1500, 2000, 800, 1700, 1800, 1030, 1200, 1400, 1800, 1400
ブランク試料の11回測定のピーク高の平均 :1423
ブランク試料の11回測定のピーク高の標準偏差(σ):
382
分析化学では、ブランク測定の標準偏差の10倍(10σ)を定量下限※とすることが多い。
ただし、定量下限の定め方は、様々な考え方に基づいて決められます。
(ブランク試料の繰り返し測定の10σを下限とするのは、一つのやり方です)
(※ 定量下限については、次のコースで詳しく説明します)
このケースでは、
10σ=3820です。ピーク高
=3820に相当する濃度は、
0.0039
(mg L-1)です。したがって、この分析による
定量下限濃度は0.0039
(mg L-1)とされます。これより低い濃度は測定結果にバラツキが大きいため定量の信頼性に欠けると判断されます。
未知試料(B)のピーク高は3600なので、未知試料(B)の濃度は「定量下限(0.0039 mg L-1)以下」と報告すべきです。