Topic outline
検量線の例題1-3) 1-1)と1-2)の続きです。
検量線で濃度を決める(1-1)と(1-2)のつづきです。
(1-1)では、表示された検量線の真ん中あたりに未知試料の信号強度があり、問題なく濃度定量ができました。
(1-2)では、未知試料の信号強度が、標準試料測定で得られた信号強度の範囲を超えた場合の扱い方を学びました。さらに高濃度の標準試料を分析するか、高濃度の未知試料を希釈すればよかったですね。
(1-3)では、未知試料の信号強度が、標準試料測定の中で濃度が一番薄いのと同じくらいか、それよりも低い信号強度が得られたときの対処法を学びます。これは難しい処理になります。
以下のように、(1-1)と同じデータを使います。
標準試料 調整濃度 測定結果
① ブランク(NO3-濃度 = 0) → ピーク高 = 1030
② 標準試料(NO3-濃度 = 0.002 mg L-1) → ピーク高 = 3500
③ 標準試料(NO3-濃度 = 0.02 mg L-1) → ピーク高 = 36150
④ 標準試料(NO3-濃度 = 0.10 mg L-1) → ピーク高 = 163223
⑤ 標準試料(NO3-濃度 = 0.20 mg L-1) → ピーク高 = 330409
⑥ 標準試料(NO3-濃度 = 0.50 mg L-1) → ピーク高 = 814093問題1-3)
未知試料(C)を測定したところ、信号強度が3.6×103 でした。次にどのような処理をすべきでしょうか?
(Cの濃度) = 0.0016079+5.9215×10-7×(3.6・103)= 0.0037 (mg L-1)
標準試料で一番低濃度の信号強度と同じくらい。こんなギリギリで大丈夫だろうか?
上の検量線の図にプロットしようにも、原点(0)と重なって見えない。検量線の低濃度範囲を拡大表示してみないと、妥当性が判断できません。
回帰式に信号強度を代入して濃度値を得て報告するには、不安が残ります。
とりあえず、拡大してみてみました。
検量線の上に乗っているように見えます。大丈夫だろうか、、、でも慎重に判断する必要があります。
問題1-3)の模範解答例①
(B)のピーク高は3.6・103で、回帰式より0.0037 (mg L-1)と定量されました。
(B)のピーク高は、標準試料のピーク高の範囲内に収まっているので、妥当なようにも思えます。しかし、濃度ゼロが期待されるブランク試料でも、ソコソコ大きなピーク高(1030)があるではないか。
ブランク試料でピークが出るということは、試料調整に用いた水にNO3-が混入していたか、実験室の空気からNO3-が混入したか、分析装置のラインにNO3-の汚染源があったか、何かしら問題がありそうです。このような不安を解消するため、必ずブランク試料を何回か測り、そのバラツキ(標準偏差)を求めておく必要があります。
(本来は、未知試料を分析する前に、ブランク試料や標準試料の繰り返し測定をして、その精度を確認しておくべきです)
そこで、ブランク試料(この場合、純水)を11個用意して、イオンクロマトグラフィーで測定し、その平均値と標準偏差を求めました。
ブランク試料(11個)の測定結果
ブランク試料のピーク高:1020, 1500, 2000, 800, 1700, 1800, 1030, 1200, 1400, 1800, 1400
ブランク試料の11回測定のピーク高の平均 :1423
ブランク試料の11回測定のピーク高の標準偏差(σ): 382
分析化学では、ブランク測定の標準偏差の10倍(10σ)を定量下限※とすることが多い。
ただし、定量下限の定め方は、様々な考え方に基づいて決められます。
(ブランク試料の繰り返し測定の10σを下限とするのは、一つのやり方です)
(※ 定量下限については、次のコースで詳しく説明します)
未知試料(B)のピーク高は3600なので、未知試料(B)の濃度は「定量下限(0.0039 mg L-1)以下」と報告すべきです。