【標準試料の範囲を超えた信号強度が、未知試料から得られたときの対処法(1)】
① 未知試料のピーク高が、標準試料のピーク高の範囲に収まるように、さらに高濃度の標準試料⑦と⑧を用意して、検量線(直線)でカバーできる濃度範囲を広げることを試みました。
標準試料⑦:0.7 (mg L-1)と⑧:0.8 (mg L-1)を準備して測定した結果を下図中の⑦と⑧に追加しました。
高濃度の標準試料⑦と⑧を測定すれば、先の検量線の延長上(灰色の破線)にプロットされると期待したのですが、上図中の灰色実線で示すように、期待したよりも小さなピーク高となってしまいました。これは、NO3-濃度が0.5 (mg L-1)を超えた範囲では、いくら濃度が高くなっても、それに比例してピーク高が大きくならないことを意味します。つまり、信号強度が頭打ちになってきたことを意味するのです。
【イオンクロマトグラフィーで信号強度が頭打ちになる理由】
イオンクロマトグラフィーでは、カラムが保持できるイオンの量には上限があり、カラムがイオンで飽和(Saturate)して定量上限を迎えます。そのようなときは、カラムが保持できる上限濃度を超えないように、分析試料を希釈する必要があります。未知試料(B):信号強度(ピーク高さ)は9.3・105 だったので、図中の回帰曲線(灰色実線)から、その濃度はおよそ0.6~0.7 mg/Lの範囲にあることがわかります。この未知試料(B)を二倍に希釈すれば、その希釈液の濃度はおよそ0.3~0.35 mg/Lになり、検量線(直線)の範囲に収まるはずです。このように、最適な希釈率を推測して、実験を上手く進めましょう。