海洋学・地球化学の教科書・参考図書を紹介します。
本コースは、私が以下の教科書や論文を読んで学んだことをベースに作りました。なるべく、引用を記すべきですが、私の知識として得られているところを記述したので、引用しきれていません。(教科書って、そのようなものかもしれません。言い訳ですが、、、ご了解下さい)
和書
「微生物の地球化学」,T. フェンチェルほか(著),太田寛行ほか(訳),東海大学出版部(2015年)補足欄に、熱力学計算の基礎を説明しており、骨太な地球化学教科書の予感。もう一冊、勉強すべき教科書が増えました。
「水圏微生物学の基礎」,濱崎恒二・木暮一啓(著),恒星社厚生閣(2015年) 2014年以降、良さそうな教科書の出版が続いている。まだ、つまみ読みしかしていませんが、これで微生物学の基礎を勉強します。
「海洋科学入門」 多田邦尚ほか著,恒星社厚生閣. 2014年に出版された新しくオーソドックスな教科書。私が最もお勧めしたい入門教科書。表紙は地味であるが、中身は堅苦しくなく、読み易い文章になっている。海洋の物理、生物、化学をリンクさせて理解するのを助けてくれるだろう。海洋学に興味がある人はもちろん、海の生物マニアもこの教科書で学んで欲しい。
「海洋学」,Paul R. Pinet(著),東京大学海洋研究所(監訳),東海大学出版会.海洋の物理から生態学まで、海洋学のかなりの分野を網羅した初学者向けの教科書である。2~3年生のうちにダァッーと読んでほしい。海の何を学びたいか幅広く考えることができるだろう。
「海洋地球化学」,蒲生俊敬【編・著】,講談社. 2014年7月に出版された海洋化学の教科書である。炭酸塩の溶解平衡の式を丁寧に説明しているところをみても基礎を重視した本であることが伺える。初学者向けの海洋化学教科書でお勧め。
「図説 地球環境の事典」,吉崎正憲・野田彰ほか【編】,朝倉書店(2013).古気候、大気科学、海洋科学、生態系など地球環境科学に関連したところを詳しく説明している。海洋物理の基礎が丁寧に説明されていて興味深い。二酸化炭素の溶解平衡の説明も詳しい。「気候変動」や「生態系」などは、よく耳にするワードであるが、これら本質を捉えにくい重要トピックスについてかなりのページ数を割いて説明している。いっぽう、海洋の栄養塩や金属成分の説明には欠ける。14000円と高価であるが、環境科学に興味があれば、購入してはどうだろうか。A4版フルカラーで342ページ。図書館で借りて読み切るのは難しい。手元に置いて、興味の向いた項目や関連項目を調べるように、“事典”として活用すべきである。
「海と湖の化学-微量元素で探る」藤永太一郎(監)宗林由樹,一色健司(著)京都大学学術出版会 (2005) 水圏の地球化学で日本語教科書では、一番充実していると思う。初学者が1ページ目から順に読み進めるのは根性がいるかも。500ページ以上で4000円。内容とともに、コスパも良い。
「海洋の科学」,蒲生俊敬【著】,NHK BOOKS.1996年.よくある海洋化学・生物の教科書は、表層の生物生産を起点にした“上から目線”で海洋を捉えたものである。本書は深海底から海洋全体をみわたしている。海底に記録されている地球の歴史、海底から湧き出る物質の追跡、これらから海水循環や気候変動を読み解く。本書を執筆されたのが蒲生先生40代半ばである。60代になった蒲生先生は白鳳丸の主席研究者(大ボス)になっても、船上でひたすらpHを測り、CTD採水の現場を取り仕切っている(2017年に東大を定年退職されました)。そんな大先生が80’~90’年代に深海研究の礎を築いたときの観測現場の様子が興味深く書かれている。文庫本でお求めやすい価格なので是非買って読もう。本コラム欄でも紹介した。
「生物海洋学入門」,Carol M. Lalli and Timothy R. Parsons著, 關文威【監訳】,長沼毅【訳】,講談社.化学より生物が断然好き!という学生は、まずこの入門教科書を読もう。海洋生物のことはもちろん、水の流れ、生物に関連した化学物質の循環についても書かれている。くれぐれも、第1~3章を読み飛ばさないこと!
「地球環境化学入門」J.アンドリュース,P.ブリンブルコム,T.ジッケルス,P.リス【著】渡辺正【訳】シュプリンガー・フェアラーク東京. タイトル通りの良書である。地球環境を化学の基礎と絡めて学ぶことができる。この分野では有名なイーストアングリア大学の大先生たちが書いた。まずは、読もう。
「水産海洋学入門」,水産海洋学会【編】,講談社.この分野のいろんな先生たちが結集して書かれた本である。水産海洋学の基礎と最新の研究成果がリンクしていて興味深い。
「海のトワイライトゾーン-知られざる中深層生態」,齋藤宏明著,ベルソーブックス.海洋科学の基礎から、深海生物の神秘、最新の研究情報までが凝縮して書かれている。船上にて一晩で読み切れて良かった。動物プランクトンと海洋学に興味ある人は是非。海洋業界では有名な、オシャレなちょいワルオヤジの先生(現在:東大大気海洋研究所)が書いた本である。
「新しい海洋科学」,能沢源右衛門著,成山堂書店. 物理海洋学の伝統的な入門書。初学者向けに丁寧に説明されているので、化学・生物系の人たちも手元にあるとよい。永久に“新しい”を冠してくれ!
「海の流れと波の科学」,宇野木早苗著,東海大学出版.本文中コラムにて詳しく紹介した。
「藻類30億年の自然史」 井上勲著, 東海大学出版会.藻類の話題を中心に地球の進化から環境科学まで幅広く書かれている。分厚い本なのに単著者なので、統一感があってよい。ただし、あれこれ興味の向くままに書かれている感がある。とりわけ微生物と海に興味があれば、一読するとよい。(専門外の私には、分厚すぎて、3/4くらい読んだところで、途中で息切れしてしまった。元々、私は読書家ではないのだ。)
「地球温暖化と海」,野崎義行著,東京大学出版会。タイトル通りの内容で、解り易く、読み物として楽しめる。絶版本であるが、ネットで中古本を安く入手できる(かも)。(私は数百円でゲットしたので、超お買い得だった。)もちろん図書館にもある。北大水産学部の分析化学教室では“ゴット”と呼ばれた偉大な先輩である。私(大木)の後輩(隠岐君)に対して「君は人間離れした顔をしているね!ワッハッハッ!」と豪快に笑い放ったのが強烈に印象に残っている。是非、図書館で読んでくれ!
「地球と宇宙の化学事典」,日本地球化学会【編】,朝倉書店. 海洋に限らず、大気や陸、宇宙まで、地球化学に関することを広く説明している。定価12000円と高価であるが、便利な参考書(事典)である。理科教員をめざす人は手元に置いておくとよいだろう。
「海洋生命系のダイナミクス③-海洋生物の連鎖」,木暮一啓【編】,東海大学出版会. 本文中でも何度か紹介してきたが、充実した内容なので再び紹介する。海洋有機物と微生物たちによる作用について、最新の研究成果を交えて書かれている。ただし、生物由来の有機ガス成分についてはふれられていない。この書物が出版された時点では、海洋の有機ガスについての知見が集約されていなかったといえる。今後、海洋有機ガスの知見をまとめなくてはならない。
「地球環境46億年の大変動史」,田近英一(著),化学同人.地球の進化の歴史を読み易く、面白く書かれている。地球の進化で海は決定的な役割を果たしてきた。現代の海、将来の海、地球環境、地球温暖化とは何か、これらを理解するには、過去に学ぶことが大事である。
「海洋化学入門」,W.S.ブロッカー【著】新妻信明【訳】,東京大学出版会.海洋コンベヤーベルトを提唱した偉大な海洋学者の著書である。非常に丁寧に書かれている。海水の動きを化学物質で追跡する“化学トレーサー”について興味がもたれる。残念ながら、絶版本である。中古でプレミアがつくほどで、私はソフトカバーの本を1万円弱で購入した。かなり使い古した本で、買って読んだら、ボロボロページが取れてしまった。図書館にはハードカバーがあるので、大事に読もう。
「海洋化学」,西村雅吉【編】角皆静男,乗木新一郎【著】,産業図書.北大水産学部の大先生が書いた超有名な教科書。通称「青本」。海洋物質循環を定量的に解析するための基礎的なモデル手法が説明されている。また、化学トレーサーや海水の分析手法にも詳しい。海洋化学系の研究室に入ったら、どんな内容が書かれているくらいは把握しておこう。残念ながら絶版本である。ネットで中古本を購入できなければ、図書館で借りるか、個人的にコピーして手元に置いておくとよい。今の学生がこの本を持っていれば、相当な“通”である。海洋学会に参加すれば乗木先生にお会いできるので著者サインをもらって自慢しよう。角皆先生は、2015年12月にお亡くなりました。
「白い海、凍る海 オホーツク海のふしぎ」,青田昌秋(著),東海大学出版会.オホーツク海での海氷形成メカニズムや海氷観測など、一般向けに易しく詳しく説明されている。観測現場や海氷の綺麗な写真も豊富で興味がもたれます。
洋書
「Chemical Oceanography and the Marine Carbon Cycle」, Emerson and Hedges,
Cambridge University Press, 2012. 化学海洋学の教科書である。分厚い洋書なので尻込みしてしまうかもしれないが、平易な英文で書かれているので、意外と簡単に読み進められる。専門英語の勉強にもなるだろう。洋書は、海外の中古本サイトから直接購入できるので、比較的安価に入手できる(かも)。化学海洋学の分野に大学院進学を考えていれば、とりあえず、購入してみてはいかがだろうか。
「Aquatic Chemistry third edition」, W. Stumm, J. J. Morgan, Wiley -Interscience
(1995) 水圏の化学の分厚い教科書。勉強すべきところが詳しく書いてある、不勉強なため、つまみ読みしかしていません。
「Atmospheric Chemistry And Physics」 J. H. Seinfeld, S. N. Pandis, Wiley
-Interscience (1990) 大気成分の物理化学の分厚い教科書。こっちの分野の人なら必読。私は半分くらい読みました。半分じゃ、ダメ? Aquatic Chemistryをちゃんと読んでいないことの個人的な言い訳です。
「Ocean Biogeochemical Dynamics」 J.L. Sarmiento and
N. Gruber, Princeton Univertisy Press (2006) 海洋の炭素循環の基礎理論から、グローバルな観測値の解析法まで、とにかく詳しく書かれている。私も、この本で学んだところが多いです。まだ、読みきれていませんが、、この分野の専門家になるなら必携です。