1) 岩礁潮間帯 rocky intertidal
shores: いわゆる磯と呼ばれる潮間帯に位置する岩礁帯であり、岩という強固で安定した基質を付着性の生物などに提供しているが、場合によっては、強い波の影響を受ける場所でもある。また、一日に2回生ずる潮汐により、空気に露出されたり海中に没したりを繰り返すという特殊な環境をもつ生育場所でもある。この場所には多数の海藻類が繁茂し、固着性・付着性の動物も多い。
2) 干潟tidal flat: 湾奥や河口域に形成される堆積物底(砂や泥からなる海底)のうち、潮間帯にあり、干潮時に干上がる場所を指す。一般的に水の動きは静かで安定している。河口域の干潟では、河川水の流入や潮汐の影響で塩分濃度が1日のうちで大きく変動する。マングローブもこの生育環境に分類される。
3) 砂浜sandy beach: 堆積物底のうち、2)とは対照的に外洋に面して、波や潮流により常に流動的に変化する砂という不安定な基質をもつのが最大の特徴である。砂浜に特異的に生育する動物も多い。砂粒の間隙に生育する小型生物も多い。
4) 藻場seagrass/algal
bed: 潮間帯から潮下帯に生息する大型植物(海藻や海草)が主体となった景観的なまとまりのことを指す。顕花植物である海草が中心となって堆積物底(砂泥底)に形成されるものを海草藻場(seagrass bed、 アマモ場)、岩礁底でホンダワラ類などの藻体が柔らかい褐藻類が中心となっているものをガラモ場 (sargassum bed)、岩礁低でアラメ、カジメ、ワカメ、コンブなど比較的藻体が固い褐藻類が中心となっているものを海中林 (kelp forest)と呼ぶ
5) 漂泳区pelagic ecosystem
(oceanic and coastal): 沿岸の沖合においては生物体を支える基質はなく、従ってこの生育場所に生息する生物は泳げるかあるいは浮遊する能力を有する必要がある。
それぞれの生育場所にはそれぞれの環境によく適した多種多様な生物が生息している。今回の実習で観察出来るのはそのごく一部であるが、生育環境とそこに住む生物の環境への適応という観点からも生物を観察して欲しい。