① 胚の採取(時期)
1.
サケマス類の場合は受精後8-10日後、キンギョやドジョウでは1日後(20℃)の眼胞期の胚を用いる。
2.
受精卵をリンゲルに入れる。
3.
卵膜除去:サケマスの場合は、透過光で胚の位置を確認後、胚の上部の卵膜をピンセットでつまみ、つまんでできた皺の横を別のピンセットでつまむ。最初につまんだ卵膜をはなして、2回目のピンセットでできた皺の横をつまむ。両方のピンセットを交互にずらして穴をあけ、穴があいたらゆっくりとひっぱり、裂け目を作る。裂け目ができたら、裂け目の端にピンセットの位置をずらし、両側に引っ張って裂け目をひろげる。これを繰り返して卵膜を除去する。
4.
卵膜除去:キンギョの場合は、0.1% trypsin、0.4% ureaを含むリンゲル液(pH 8)に浸して1−2時間放置する。卵膜が溶けたら胚を集める。
5.
胚からの卵黄の除去:サケマスの場合、胚体の下部に油球が密集している。この部分を油球ごとはずし、別のリンゲル液へ移す。その後、ピンセットで丁寧に油球をはずし、胚体のみにする。
6.
胚からの卵黄の除去:キンギョの場合は、卵黄嚢の細胞の膜を2本のピンセットでつまみ両側に引っぱり破くと、中の卵黄細胞が壊れること無く外へ飛び出して来る。卵黄細胞のみを引き出し、残った胚を他のシャーレのリンゲル中に移す。
② 胚の処理
1.
外した胚を0.075M KCl液に入れ低張液処理を行う。
2.
処理を始めてから10分後から胚をよく観察し、膨張してきた胚からピペットを用いてカルノア氏液(メタノール:酢酸=3:1)へ移す。丁寧に移さないと細胞がバラバラに散ってしまう。カルノア氏液に触れたピペットは、そのまま低張液に戻しては駄目!別の容器でカルノア氏液を洗ってから低張液に戻すこと。
3.
全ての胚をカルノア氏液に移したら、新しいカルノア氏液が入っている固定瓶に胚を移す。ゆっくりと瓶を震盪させる。
4.
10-20分後、カルノア氏液を捨て、新しいカルノア氏液を加える。
5.
これを-30℃のストッカーに保存し、適宜、染色体標本を作製する。
③ プレパラートの作成
スライドグラスの洗浄
染色体標本作製用のスライドグラスは、清浄なものを使うこと。できれば、超音波洗浄をかけて蒸留水で洗い、エタノール中に保存しておくと良い。(時間がかかる)
染色体標本の作製(Chopping法)
1.
-30℃のストッカーから保存しておいた胚を出す。
2.
スライドグラスの上に、注射針でDWを一滴たらし、その上に胚を一つ置く。
3.
メスの刃で胚をたたき、乳白色になるまで細かくする。細胞液が乾いてきたらDWをわずかに加える。
4.
細胞が細かくなったら、ピペットでカルノア氏液を加え細胞をスライドグラスに拡げる。
5.
周りに火がつかないように注意して、カルノア氏液に点火し細胞を乾燥させる。
6.
スライドグラス上に残るのは酢酸で、これを捨ててマッペに乗せる。
7.
埃が付かないようにスライドボックスにしまう。
染色体標本の作製(Air
Dry法)
1.
-30℃のストッカーから保存しておいた胚を出す
2.
濡れたペーパータオルの上にスライドグラスを乗せる。
3.
1.5 mlテストチューブに一つの胚を入れ、カルノア氏液を200μℓ位加える。
4.
ピペットマンにつけたイエローチップで胚をつぶし、さらに細胞を出し入れして細胞懸濁液を作る。
5.
濡れたペーパータオルの上にスライドグラスを置く。
6.
スライドグラスに息を吹きかけ曇りをつくる。
7.
直ちに30cm程上から細胞懸濁液をスライドグラスの上に落とす。
8.
重ならないように、さらに数滴垂らす。
9.
スライドグラスをマッペに移し、乾燥させる。
10. 埃が付かないように箱にしまう。
ギムザ染色
1.
染色瓶に蒸留水(PBSでも可)を半分入れる。
2.
ギムザ氏液を5 ml加えよく混ぜる。
3.
染色体標本の付いたスライドグラスをバスケット(ギムザ用のもの)に入れる。
4.
バスケットをギムザ氏液につけ5〜10分染色する。
5.
バスケットからスライドグラスを取り出し、蒸留水で洗う。
6.
裏表を間違えないようにマッペに置き乾燥させる。
7.
埃が付かないように保存し、可及的速やかに観察する。
④ 観察
1.
生物顕微鏡に染色体標本をつけたスライドグラスをセットする。
2.
全体を俯瞰し、中期の染色体像が見られるかどうかをチェックする。
3.
染色体像が頻度高く見えるようであったら、端からまんべんなく観察し、良い標本があったら写真を撮影する。
⑤ 核板標本の作成
1.
写真の中の染色体数をカウントし、予想される数があるか、重なっている染色体がないかをチェックする。
2.
画像の中からそれぞれの染色体をコピーし、台座に並べて行く。
3.
動原体の位置から、中部着糸型、次端部着糸型、端部着糸型に分ける。
4.
大きい順から並べる。