Topic outline
実習の目的
本実習で行う観察は、「指示されてあるものを探す」ことから始まる。しかし、それだけで終わってはいけない。実習は、見ている組織が他とどう繋がっているのか、どのように変化していくのかを「観察する能力を養う」ことを目的としている。
本実習で行う実験の多くは、特殊であるが単に技術であり、時代が経つにつれ陳腐化していく。しかしながら、技術を使いながら自分が考え工夫していく過程が、「実習に参加した最大の成果」と考えて欲しい。そのようなテーマでレポート課題を用意している。
実習内容
(1) 正常発生の観察
胚を操作して生物学的な改変を行うためには、受精卵がどのような形態形成過程を経て組織や器官ができてくるかを理解しておく必要がある。そのために、まず、親個体の解剖を行い、その構造を理解するとともに、人工授精した卵の発生過程を観察する。
(2) サケマス類での染色体操作
養殖魚として代表的なサケマス類では、不妊化や単性集団の作成等、染色体操作を利用した生物学的な改変ができている。ここでは、精子への紫外線照射による遺伝的不活化、遺伝的不活化した精子の受精による半数体誘起、第2極体放出阻害による雌性発生2倍体、3倍体の誘起実験を行う。さらに、誘起した半数体、二倍体、三倍体を用いて、FCMと染色体標本による倍数性の確認を行う。
(3) サケマス類、コイ目魚類の胚の操作
魚類の胚を操作するために使う操作器具などを実際に自分で作成する。これらを用いて、①卵黄の切除、胚盤を切除・移植、②受精卵や胚への溶液の注入、③胚細胞を移植するなどの胚操作を行う。これらの操作を加えた胚の発生を観察し、魚類の発生機構がどうなっているかを観察・推察する。
(4) 遺伝子資源の保存
遺伝子資源の保存法としての精子の凍結保存を行う。また、この凍結精子を用いた人工授精を体験する。
(5) 講義
それぞれの実習に関係する講義を行う。
長崎大学の征矢野先生の講義・実験(日本南方域での増養殖)も予定しています。
(6) レポート作成
それぞれの実験のプロトコールに沿って、自分で体得したノウハウを書き込むこと、用意された課題に対して自分がどう取り組んだかを記述することをレポートの課題とする。
実習期間中の生活
宿泊施設は臼尻水産実験所を使う。宿泊の手引きについては、各部屋に備え付けてある説明書を読んで、対応すること。宿泊室は共同で使うものなので、ベッドや寝具、シャワー室等、あとで利用する人のことを考えてきれいに使用すること。最終日は、シーツやカバーをはずし、玄関の所定の場所へだすこと。