東北沖太平洋には、亜寒帯循環の親潮が南下、亜熱帯循環の黒潮が北上してきます。東北沖太平洋は、両方の大きな海流に派生する渦がせめぎ合うような場所です。日本海には、黒潮から分岐した対馬暖流が北上しています。対馬暖流の一部は津軽海峡を抜けて、太平洋に流れます。したがって、下の絵のように、東北沖には、亜熱帯由来(黒潮由来)の水が、北から南下してくることもあるのです。対馬暖流は、日本海を北上する途中で、中国や日本の河川からの淡水流入を受けて、元々の黒潮の水よりも若干低塩分化しているのが特徴です。
東北沖太平洋の中層~表層には、親潮水、黒潮水、津軽暖流水、中層の水が見られ、下図(右)のように、水温と塩分範囲で区分されます。下の図(右)によると、黒潮水(KW)の塩分は34.2以上、東北沖に流入した津軽暖流水(TW)の塩分は33.7~34.2、親潮水)の塩分は33.7未満です(Hanawa and Mitsudera, 1987)。親潮水は亜寒帯水なので、低水温なのが特徴ですが、夏場になれば太陽放射加熱により温度が上昇します。その夏場の親潮表面水を、下の図(右)ではs-OWと表しています。これら表層水の下には、密度が26.7σ以上の中冷水(CL:亜寒帯で沈み込んだ中層の水)があります。
上図(右)は、Hanawa and Mitsudera, Journal of the Oceanographical Society of Japan, 42, 435-446, (1987)の図を編集しました。