次に「エルニーニョ現象」「ラニーニャ現象」との関係を調べてみる。ともに太平洋を中心に生じる大規模な気候変動のことで,数年おきに発生する。エルニーニョ年には日本周辺の気温の季節変化が小さくなり,夏は寒くて冬は暖かくなる。ラニーニャ年は逆に,夏は暑くて冬は寒くなる。
マダラ仔魚が経験する1~3 月の平均水温を,エルニーニョ年,通常年,ラニーニャ年の3 つに分けて比較すると,統計学的有意差はなく(一元配置の分散分析,危険率30%),4~5 月の平均水温も差はなかった(58%)。つまり,エル・ラニで気温が変化しても,陸奥湾の水温はそれほど変化しないのだ。それよりも陸奥湾やその上流にあたる日本海で局所的に生じる水温変化のほうが,マダラ仔稚魚の生残率に効いているようだ。だから,「今年の冬はラニーニャで気温が低くて寒いから,マダラ稚魚が増えるかもしれない」としゃべったらバツだが,「なんか知らんけど,水温が低いから稚魚が増えるかもしれない」はマルなのだ。