次に1989 年から2019 年までの脇野沢地区の漁獲量と,その親から生まれた5 月下旬から6 月の着底稚魚の総個体数の経年変化を見てみよう(図6.9)。漁獲量は1990 年(1989 年12 月~1990 年3 月漁期)のピークの後,約25 年間低迷し,2017 年に807 トン,2018 年は868 トンまで復活した。一方,着底稚魚の総個体数は2005 年に0.60 億個体,2011 年には4.6 億個体,2018 年には31.4 億個体まで回復した。つまり,「稚魚が少なければ,その後,成魚が少ないことは確実。稚魚が多ければ,その後,成魚が増えることもあるが,減ることもある」。概念的に説明すると,「資源の復活には,稚魚の個体数の増大が必要条件ではあるが,十分条件ではない」となる。
図6.9 1989~2019年の陸奥湾マダラ産卵回遊魚漁獲量(脇野沢地区)と,5月下旬~6月の着底稚魚推定尾数。「親魚1989年漁獲量」とは1988年12月から1989年3月の漁獲量を指す。親魚漁獲量データは,青森県産業技術センター水産総合研究所,青森県農林水産部水産局水産振興課および脇野沢村漁業協同組合より提供。