マダラは全長25mm ですべての鰭(ひれ)が成魚と同じ形になり,名前が仔魚から稚魚に変わる。餌は,もっと大型なかいあし類も捕食できるようになるが,浮遊性の巻き貝やエビ・カニ類のゾエア幼生,カニ・アナジャコ・ヤドカリのメガロパ幼生などの,さらに大きな餌に出会うと,これらを優先して捕食する(図6.3)。その結果,6 月にかいあし類よりも大型の餌を多く捕食していた1995 年や1997 年には,4 月から6 月の間の成長速度はそれぞれ0.89mm/日,0.84mm/日を示し,他の年よりも高成長だった(図6.4)。同じ量の餌を食べるにしても,小さい餌を多く食べるよりも,大きい餌を少なく食べるほうが高成長で,太りやすい。たとえて言うなら,お茶碗に盛り付けたご飯は掻き込めるが,部屋いっぱいに一粒ずつ5 cm 間隔で並べられていたら,食べるのに時間がかかるし,何よりも面倒くさい。だから,体の大きさに合った大きさで,少ない回数で楽に飲み込める餌が,高成長につながる効率の良い餌だ。
さらに,全長70mm を超えると海底のヨコエビ亜目やエビ類,小型魚類も捕食するようになり,下腹が出っ張って,マダラらしいメタボ体形に変わる。この時期以降は成魚になるまで,魚類やエビ・カニ類などが主食のままだが,アラスカなどでは潜水中の鳥類を捕食することもある。
図6.3 6月陸奥湾,マダラ着底稚魚の胃内容物中の餌生物組成(重量割合)の地点別,採集年別変化。nは解析した稚魚の個体数。髙津(2005)を基に作成。
図6.4 マダラ仔稚魚の4月と6月の平均全長と,その差から推定した日間成長率の年変化。エラーバーは全長範囲(最大全長~最小全長)。Takatsu et al. (2002)のデータから作図・推定。