深層~中層
先のコースでは底層水と深層水の形成について説明しました。北太平洋(170ºE)の水温の鉛直分布(下図の上)をみてみましょう。紫色(水温2℃以下)で塗ったところが北太平洋深層水です。北太平洋深層水(2500~4500m)では、2000m深度が増しても水温低下は0.5℃にも満たないように、水温や密度がかなり一様であす。深層水より上(500~2500m)では2000m深さが増すと水温は5~10℃も低下します。
深層水より上の層は水温(密度)が急激に変化します。このように水温(や密度)が急に変化する層を水温躍層(や密度躍層)と呼びます。この躍層は半永久的(おそらく深層循環が続く限り)に見られるので、永久躍層ともいいます。 次に、同じ場所の塩分の鉛直分布(上図の下)をみてほしい。亜寒帯表面から、低塩分水が亜熱帯の水深300~1000mに貫入している様子がわかります。これを北太平洋中層水とよびます。中層水の起源は、日本列島の東方沖にあり、中層水は北太平洋の中緯度域に広がっています。この中層水は、おおよそ亜熱帯では水温10℃以下(上図(上)の黄緑)、亜寒帯では塩分33.8以上(上図(下)の水色)の水に属します。
中層水
中層水の形成を大まかに説明します。亜寒帯と亜熱帯の移行領域(混合域)では、亜寒帯水(低塩)と亜熱帯水(高塩)がせめぎ合っています。夏は、亜寒帯の表面水も20℃近くまで昇温して低密度化(約23σ = 1.023 g cm
-3)します。
冬になると、亜寒帯(北緯40度より北)では海面冷却が著しく、表面水温は5℃を下回り、高密度化します(約26.6~26.9σ = 1.0266~1.0269 g cm
-3)。いっぽう、亜熱帯表層では、冬でも海面冷却はそれほどでもなく、15℃以上を保ち低密度(約25.5σ = 1.0255 g cm
-3)のままです。移行領域では亜寒帯水と亜熱帯水がせめぎ合っているのだから、温度が低下して高密度化した亜寒帯水が亜熱帯表層の下に潜り込みます。毎冬、大量の亜寒帯水が亜熱帯表層の下に押し込まれていて、水深300 – 700m付近に“北太平洋中層水”を形成します。この中層水は、亜寒帯水に起源を持つから低塩分なのが特徴で、密度は26.6~26.9σです。一般的に中層水が見られるのは、各大洋の低~中緯度に限られます(下図)。
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北太平洋の中層水(まとめ)
北太平洋の高緯度域で冬場に表層水が冷やされて高密度化
その高密度水は、北大西洋由来の深層水より重たくならず
深層水の上、北太平洋の中層に広がる。
「北太平洋中層水」として、亜熱帯全域に分布
永久密度躍層
表層より深いところで密度が急に増す。(永久)密度躍層と呼ぶ。
深層では密度があまり変わらない
永久密度躍層に対して、表層では密度分布が季節ごとに変わるので「季節躍層」などと呼ぶこともあります
※本当に、深層循環は永久なのでしょうか? レポート課題①で各自、考えをまとめましょう
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