海洋化学
ー水の流れ
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-春季ブルームと表層混合層
-水塊区分-海洋の有機物
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ー水の流れ
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-春季ブルームと表層混合層
-水塊区分
-海洋の有機物
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海水の鉛直方向への移動や混合は密度差に支配されるので、塩分と水温を測定して水の密度差から水の動きが調べられてきました。
ある海域、ある水深にある水塊は、ある特徴的な(固有な)塩分と水温の範囲を持ちます。水塊の移動や混合を知るにも、水温と塩分を調べるのが基本です。
練習船うしお丸でのCTD観測の風景(LASBOS Youtube動画)
Conductivity, Temperature, Depthを計測するので、CTD観測装置といいます。植物プランクトン色素のクロロフィルや酸素濃度も同時に計測するオプションもあります。CTDと一緒に、海水を採取するボトルも付属することがあります。下の動画は、CTDのみの観測風景です。噴火湾観測(うしお丸)では、学生がCTD観測の甲板作業をやります。学生が甲板作業の最前線で活躍する調査船、練習船はあまりないですよ。
CTD観測の様子(下動画:41MB)
ある観測ライン(鉛直方向や水平方向)で測定した海水の水温(Temperature)と塩分(Salinity)をX-Yプロットした図を、T-Sダイヤグラムと呼びます。
水塊毎に特徴的なプロットがみられます。これは水塊を区分したり、水塊の移動や混合具合を調べるのに便利なので、日本周辺のT-Sダイヤグラムを例に説明するので、北西太平洋の亜熱帯と亜寒帯、その移行領域の特徴を理解しましょう。
おおまかに、密度26.7σ未満が表層とされます。表層とは、表層混合層とサブダクション層を合わせた層のことです。亜熱帯は分厚い表層、亜寒帯は薄い表層になります。北太平洋の亜寒帯と亜熱帯は、塩分34で分けられます。
親潮、黒潮の移行領域の水温塩分範囲を理解しましょう。
気象庁のHPでも、海を学びましょう。
海上保安庁でも、海流や潮汐について詳しい情報を提供しています。
水産資源(魚など)も、水温分布にしたがって分布します。
船観測をベースとした海洋学者たちは、船に乗って必死にデータを得ている。海洋学者って、船酔いするようじゃダメ? と思うだろう。たしかに、船酔いをしないほうが、観測が楽チンなのは当然である。しかし、「船酔いする」=「海洋学に向いていない」とか、「船酔いしない」=「海洋学に向いている」 は、あまり当てはまらない。海洋学で素晴らしい業績を挙げてきた大先輩たちには、船酔いが辛い、という方が結構多いように思うからだ。船酔いが辛くて、死ぬ思いで得たサンプルなので、大事に分析して、丁寧にデータ解析をするのだろう。なんとか我慢できるくらいの船酔いであれば、最終的に素晴らしい業績を残すのだと思う。 いっぽうで、観測船に乗り合わせた研究者が、皆、船酔いでヘバっていては、テンションが下がってしまう。荒波でもアホみたいに元気な研究者も必要なのである。私は、船酔いを一度も感じたことがない。船酔いの処方アドバイスは全くできないが、このような記事を書くのが私の役目だと思う。
いっぽう、東大大気海洋研究所の蒲生先生(現在、名誉教授)の著書「海洋の科学,蒲生俊敬(著)NHK BOOKS」では、船酔いをする人の立場から、船酔いについてコラムで語っている。 「結局、気に病むのが、一番いけないようだ。船酔いで死ぬ人はいない。~中略~ 全身全霊、命をかけて研究に打ち込む気概があれば、船酔いなどどこかへ吹っ飛ぶはずなのだが・・・。」 このコラムを読むと、恐れおののいてしまうが、それ以上に海洋研究に魅力があることを物語っている。
蒲生先生とは、なんどか白鳳丸航海をご一緒させてもらいました。航海リーダーの蒲生先生が、ほぼ全ての観測に参加(※)、アルカリ度とpHの測定も一手に引き受けていました。
※海洋観測は24時間体制で、観測場所になったら、時間シフト制で働きます。0-4, 4-8, 8-0の三交代制(一日4時間×2回)が多いです。任務時間外にも、個別研究の海水処理をやります。
(大木淳之)
海洋物理学の教科書をパラパラめくると、流体力学の偏微分方程式がいきなり出てきて、初っ端から挫折してしまう人が多いハズである。本参考書の著者(大木)は物理学科出身なので、学部学生のころは、偏微分方程式は当たり前のように解いていた。しかし、20年以上も前のことなので、その感覚は何処かへ飛んで行ってしまったようだ。今からでも、再び流体力学を一から学ぶべきなのだが、ずっとサボり続けてきた。のちのち、本コースにて「ゼロからはじめる海洋物理学」の章を作ろう! と決心したときに、私も海洋物理学をゼロから学ぼうかと思う。
自分のことはさておき、海洋学の将来を担う若い人たちには、生物・化学屋を自認していても、是非海洋物理学も学んで欲しい。
以下は、海洋学の一般教科書の範ちゅうであるが、
海水の鉛直構造や水塊、海流については、「新しい海洋科学,能沢源右衛門著,成山堂書店」 30年前に出版された。永遠に「新しい」を冠してほしい! それより前の「古い海洋科学?」の教科書と比較したら違いを書評に記そう。初学者向けに丁寧に説明されている。ネットで中古本が手に入る。「ほぼ新品」は、プレミア価格で6000円!(「状態が良い」は1500円)
これから読んで学ぼうと思っているのが、「海洋の物理学, 現代地球科学入門シリーズ4, 共立出版, 花輪公雄著」です。こちらは出版されたばかり。パラパラ読んでいるところですが、説明が分かりやすい。
海の流れの仕組みを定性的に理解したいなら、「海の流れと波の科学,宇野木早苗著,東海大学出版」がお勧めです。私は本書で海の流れを定性的に理解したつもり(・・・)になれてよかった。また、海洋物理学をもう少し深く知りたい、というキッカケを与えてくれた本です。ただし、海洋物理学は、数式を組み立てシッカリ解いてゆくというのが基本なので、本書は海洋物理学入門には当てはまらないかもしれない。生物・化学屋が本書を読んで、海洋物理学に興味を持ち、その後海洋物理学に入門するのがよいでしょう。
(大木淳之)