第63次南極地域観測隊は、2021年10月28日から2週間の新型コロナウイルス感染症対策の隔離を経て、11月10日に横須賀港を南極観測船「しらせ」で出発しました。しらせは海上自衛隊が運用する砕氷船で、1957年の第1次観測隊で使用された「そうや」から数えて4代目になります。通常、観測隊は11月下旬から12月上旬頃に成田空港から出国し、オーストラリアのフリーマントルでしらせに乗り込むのですが、新型コロナウイルスの影響でオーストラリアへの入国ができないため、日本から乗船して昭和基地へ向かうことになりました。観測隊が日本から乗船して南極へ向かうのは第62次南極地域観測隊に続き2年連続です。
出港から昭和基地に到着するまでの主な出来事は以下のとおりです。
2021.11.10 横須賀港出港
2021.11.17 赤道通過
2021.11.19 ロンボク海峡通過
2021.11.24 フリーマントル入港
2021.11.26 フリーマントル出港
2021.12.01 南緯55度通過
2021.12.02 氷山初視認
2021.12.10 定着氷縁着、砕氷航行開始
2021.12.16 昭和基地第1便
2021.12.19 昭和基地沖接岸
昭和基地まではおよそ40日の航程でした。出発時の日本は涼しい秋でしたが、南下するにつれて気温は徐々に上昇します。熱帯を通過して南半球のオーストラリアは夏直前といった状況でした。
フリーマントル出港後は『吠える40度、狂う50度、絶叫する60度』と呼ばれる暴風圏を進みます。現在のしらせは比較的揺れない船と言われていますが、それでも船に慣れていない隊員はベッドから出られない日々だったようです。私はそれほど船に強いほうではないのですが、幸いなことに全く船酔いしませんでした。
その後、往路では珍しいオーロラとの遭遇を経て12月1日に南緯55度を通過。翌日には氷山と初めて遭遇し、南極が近づいていることを実感しました。ここで進路を西に変え、南極大陸縁辺部に沿って昭和基地に向かいます。暴風圏はまだ続いており、西風に逆らって進むため、艦橋まで波をかぶることもしばしばでしたが、やがて流氷帯に突入するころには揺れも収まりました。
流氷帯を通って昭和基地のあるリュツォ・ホルム湾に入ると、定着氷域に突入します。ここからは「ラミング」と呼ばれる砕氷航行が始まります。行く手を阻む厚い海氷に何度も体当たりを繰り返しながらゆっくりとしらせは進み、12月19日、日本から約14000km離れた夏の涼しい昭和基地に到着しました。
(掲載協力:国立極地研究所)