Topic outline

  • 定置網におけるゼニガタアザラシによる被害

    現在,鰭脚類の漁業活動への影響低減と保護管理との安定したバランスの実現は北半球北部の多くの地域において課題となっており,日本も同様の課題を抱えています。北海道では、トド、アザラシ(ゴマフアザラシ、ゼニガタアザラシ)、オットセイなどの海獣類による漁業被害が深刻となっています。被害を与える主な海獣の種類は海域で異なり、日本海側、オホーツク海側ではトドによる被害が多く、太平洋側ではアザラシ(主にゼニガタアザラシ)による被害が多くを占めています。太平洋に面する北海道東部沿岸(以下、道東沿岸)の親潮海域は、生産力の高い海域の一つであることもあり、海獣類の多くがここを採餌場として利用しています。ゼニガタアザラシはそうした海獣類の中で唯一この海域の沿岸に周年生息して繁殖しています。北海道で確認されているゼニガタアザラシの上陸場11か所のうち10か所は釧路から根室周辺にかけての道東沿岸域、残りの1か所は襟裳岬周辺にあります。このため、これらの地域の沿岸で営まれる漁業では、ゼニガタアザラシによる漁業被害が顕著となっており,特に沿岸域に一定期間敷設されるサケ定置網では被害が目立っています。漁業者はこうした被害をトッカリ食いと呼んでおり,定置網に入網したサケのほとんどがこうした被害を受けることもありました。