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本研究はバランスドオーシャン事業のサポートで、北大水産学部の練習船うしお丸航海中に実施されました。
北海道大学水産学部の大木准教授、当時博士研究員の鈴木君、当時修士課程の淺野君にご参加いただきました。また本研究は以下の論文に発表されました。
調査は2020年8月(夏)と2021年2月(冬)、北大の練習船うしお丸航海中に実施されました。
採水地点は陸(恵山岬)から約 45 km 離れた、水深約 800 mのところです。
調査海域の恵山沖は津軽暖流と親潮の影響を同時に受けます。
夏は表層水に津軽暖流(水温6度以上、塩分33.7-34.3) が乗っていて、水深20から140 mの間に水温躍層が形成されています。
冬は親潮(水温3度以下、塩分33.0-33.3) が表層を流れていて、50から200 mの中層は津軽暖流の影響を受けています。
実験には以下の6つの実験区を設け、それぞれ10 Lの表層水を採水したタンクから 2 L x 5反復で濾過をしました。
実験区1:0.45 um pore size フィルター(コントロール)
実験区2:0.22 um pore size フィルター
実験区3:0.45 um pore size フィルター(砂を添加)
実験区4:0.45 um pore size フィルター(珪藻土を添加)
実験区5:0.45 um pore size フィルター(ジルコニアビーズを添加)
実験区6:0.45 um pore size フィルター(モレキュラーシーブを添加)
種の豊富さ(Species richness)と生物多様性(Shannon-Wiener H index) ともに冬が高く、理由として
1)夏に形成されていた水温躍層が解除され表層水と低層水が混合された(冬の底生魚の検出率が高い)
2)冷たい水温を好む底生魚が表層まで移動した
3)水温が低くDNAの分解が遅い分、より多い魚種が検出された(夏:21.4℃、冬:2.9℃)
この3つが考えれます。
また、夏と冬の出現種を比較した結果、群集構造がはっきり分かれていました。
スケトウダラは、夏は計30サンプルのうち3サンプルでしか検出されてないが (10%)、冬は全てのサンプルで検出されました (100%)。
これはスケトウダラの生活史と関係があります。
スケトウダラは冬に調査海域で過ごしながら産卵しますが、夏には道東海域で過ごすため、このような結果になりました。
一方、カタクチイワシ(夏:93.3%、冬:6.7%)は調査海域に一年中いますが、夏に産卵する生活史を持っています。
水中の環境DNA濃度は、魚の産卵期に高くなることが過去の研究より知られています。
魚の生理状態による環境DNAの変動および水中の環境DNAの不均等さについては以下のコースをご参考ください。
本研究は、公益財団法人ヒロセ財団、公益財団法人前川報恩会からご支援いただきました。