海洋応用生命科学部門・海洋生物工学分野・笠井研究室の紹介です
魚介類は貴重なタンパク源です。増養殖による安定的な供給においては,対象生物の感染症を防ぐことが重要です。世界181の国と地域が加盟して家畜等の安全・安心確保を目指す国際機関「国際獣疫事務局(World Organization for Animal Health: OIE)」では,疾病の制圧および根絶を目指して技術的支援および助言を行っています。私たちも,サケ科魚類のウイルス病の診断法開発や防除対策の確立を通して、SDGs(飢餓をゼロに)に貢献して参ります。
魚病学とは?
魚の感染症に関する研究です。
病気になった魚がどのような症状を起こすのか、それに対して生体防御がどのように働くのか、などを広く学びます。
病気になった魚の例
カンパチの主な疾病を例に多様な疾病を紹介します。
赤字で示された疾病はワクチンを利用して予防が可能で、緑字の疾病は投薬治療が出来ます。それ以外の病気については薬に頼ることは現状厳しく、飼育環境の改善などの工夫で防いでいくしかありません。
それぞれの疾病は、3年次の魚病学で説明します。
では、日本で主に養殖されている魚種を見てみましょう。
畜産では主に牛、豚、鶏に限られているものの、水産養殖ではこのように多種多様な魚介類が生産され、今現在も新たな養殖品種が開発されています。
しかし、魚を飼育するときに、各魚種ごとの病気が発生するのが養殖現場の悩みになっています。
日本は生産量100万トンに対し,魚病被害額100億円程度です。
これを世界の養殖業生産量11,451万トンに当てはめると1兆円超の魚病被害と推計されます。
サクラマスとギンザケ由来の株は腫瘍を誘発しますが(腫瘍原性あり)、ニジマス由来は腫瘍ができない(腫瘍原性なし)とされています。
これの原因がウイルスの違いによるものか、宿主(感染される側)の影響なのかについて研究しています。
家畜の場合、獣医師が診断および治療を行いますが、魚の場合は、獣医師だけでなく資格を持っている県職員(公務員)が診断し、薬剤の使用指導書を発行します。
未知の病気や病原体の場合は,増養殖研の魚病診断センターか大学に依頼することになります。
飼育現場で行われる検体採取の様子
(注意!採血や解剖の映像が含まれています)
https://repun-app.fish.hokudai.ac.jp/pluginfile.php/12688/mod_label/intro/%E9%AD%9A%E7%97%85%E5%AD%A6.mp4?time=1639551275491
ここでOIEという組織についてご紹介したいと思います。
OIEは人間のWHOに相当する、動物の健康を守るための世界的な組織です。