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    • 本研究により,マイクロプラスチックは食物連鎖を通じて,海洋生態系のより高次に位置する動物に移行することが解明されました。マイクロプラスチックは動物の摂食や消化などの活動に負の効果を与えるばかりではなく,より細粒化されると消化管から体内組織に移行し悪影響を与えることも指摘されています。また,プラスチックは多様な有害化学物質*1 を含んでおり,これも食物連鎖を通じて濃縮することにより高次消費者へ影響を与える可能性も示唆されています。現在,有害化学物質を含むマイクロプラスチックを取り込んだアミをカジカに摂食させることにより,カジカ体内の化学物質各種の蓄積状況を調べる実験を実施中で,これにより食物連鎖を通じたマイクロプラスチックの海洋生態系への影響の全体像を明らかにしていきたいと考えています。

      *1 有害化学物質 … 石油製品であるプラスチックは化学的親和性からPCB やPAH に代表されるPOPs(残留性有機汚染物質)を吸着するとともに,臭素系難燃剤や紫外線吸収剤などの添加剤と呼ばれる多様な化学物質を含んでいる。人間を含めた動物では,これらの化学物質が体内に高濃度に蓄積すると様々な悪影響を生ずることが知られている。