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    •  近年,極域では温暖化によって急速に海氷が減少しています。季節海氷域である北部ベーリング海では,2018 年に顕著な海氷衰退が観測され,例年よりも 1 か月ほど早く海氷が融解しています。その影響により,海洋生態系に様々な変化が観測されています。例えば,植物プランクトンブルーム*1の遅延,魚類の分布域の北上,海鳥の個体数減少,アザラシの栄養状態の悪化が知られています。各生物に見られた悪影響は,水温上昇だけでは説明がつかないため,餌環境の悪化が原因と推察されていましたが,詳細は不明なままでした。 

       海洋における高次捕食者の餌としては,動物プランクトンが最も重要です。動物プランクトンは,植物プランクトンを食べ,自らが魚類などに食べられることで,低次生物から高次捕食者へとエネルギーを受け渡します。研究グループは,動物プランクトンの中でも,特に生物量で優占するカイアシ類に注目しました。カイアシ類の量や組成を調べることで,海氷融解時期の変化を起点とする海洋生態系への影響の過程を解明することを試みました。 

    • 【用語解説】 

      *1  ブルーム  …  光合成を行う植物プランクトンの大増殖のこと。