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  •  海洋の物質循環は地球環境変動に影響を及ぼします。海洋における物質循環は物理的な拡散に加えて,動物プランクトンが表層でマイクロプランクトンを摂餌して排泄する,糞粒の沈降輸送が重要なことが知られています。一般的に動物プランクトンの糞粒の定量採集は,セジメントトラップと呼ばれる,上層からの沈降粒子を捕集する機器を係留して行われています。しかし,セジメントトラップによる糞粒の捕集には23日間の係留期間が必要なため,野外における動物プランクトンの糞粒の量やサイズに昼夜差があるのかについては不明なままでした。研究グループは夏季の南部オホーツク海において,糞粒も採集可能な細かい目合いの動物プランクトンネットによる水深0-1000 m間の昼夜の層別採集を行い,その試料について画像イメージングスキャナによる解析を行い,糞粒の定量評価に関する新しい手法を開発しました。

     夏季の南部オホーツク海は,海氷融解水による塩分の低い海水が日照により温められた,高温かつ低塩分な非常に比重の軽い海水が表層に見られます。その下に冬季に結氷する際に排出された,低温で塩分の高いブライン水(中冷水)が存在し,密度躍層が顕著に発達します。動物プランクトン群集には,この強固な密度躍層を越える日周鉛直移動を行う能力のある,オキアミ類とカイアシ類メトリディア・オコテンシスが優占します。研究グループはこれら動物プランクトンの餌である,マイクロプランクトンから中・大型動物プランクトンまでを定量採集し,その群集構造について種レベルの解析を行い,糞粒による沈降輸送と併せた解析を行いました。