今後への期待
セクションアウトライン
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本研究によって,動物プランクトン相に優占する肉食性カイアシ類 2 種の再生産タイミングは同じで あるものの,その後の成長速度や再生産様式は種により大きく異なることが明らかになりました。両種 の再生産時期はいずれも,日照が無いため,従来は生物生産が乏しいと考えられていた極夜にありまし た。本研究の結果は,北極海の極夜が従来考えられていたよりも,生物活動が活発なことを示していま す。また両種の再生産時期は同じであるものの,その後の成長速度は種により大きく異なることが明ら かになりました。北極海の海洋生態系において肉食性カイアシ類は,高次捕食者である魚類の餌になる 3 / 4 だけでなく,大型な粒子食性カイアシ類の初期発育段階個体を捕食する,海洋低次生態系内の物質循環 を左右する重要な役割を担っています。そのため,今後の海洋環境変動に応じて,どちらの肉食性カイ アシ類が変化した環境に適応し,その個体数を増やすかによって,海洋低次生態系内における物質循環 がどのように変わるかが決まります。環境が変化しつつある状況にあるのが現在で,その対照資料とし て重要な,過去環境における動物プランクトンの生態を明らかにしたのが,本研究の位置づけです。
本研究成果を通して,今後の北極海における海洋生態系の変化の評価が可能になることが期待できます。