研究成果
章节大纲
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試料中に優占した肉食性カイアシ類は 2 種が居ました。1 種は体サイズが大型なパラユーキータ・グ ラシアリスで,もう 1 種は体サイズが小型なヘテロラブダス・ノルベジカスでした。これら 2 種の食性 は共に肉食性ですが,その摂餌様式や再生産様式は大きく異なることが知られています。パラユーキー タ・グラシアリスは待ち伏せ型の摂餌様式で,比較的大型な卵を孵化するまで抱卵する種です。一方, ヘテロラブダス・ノルベジカスは摂餌に用いる毒針を持ち,体サイズに比較して大型な動物プランクト ンを餌とすることが可能で,その卵はきわめて小型で,抱卵すること無く,多数の小型の卵を水中に産 卵する種です。これら両種の再生産はいずれも,北極海では日照の無い極夜にあることが分かりました。 しかし,その後の成長速度は種により大きく異なり,摂餌に毒針を用い,小型な卵を大量に産卵するヘ テロラブダス・ノルベジカスの成長は速やかなのに対し,待ち伏せ型の摂餌様式で,比較的大型な卵を 孵化するまで抱卵するパラユーキータ・グラシアリスの成長は遅いことが明らかになりました(図 3)。
植食性動物プランクトンと魚類の間をつなぐ動物プランクトンとして重要な,肉食性カイアシ類 2 種 の生活史を,SHEBA 試料を用いて明らかにしました。

図3.肉食性カイアシ類2種には,成長の早い種(赤:ヘテロラブダス・ノルベジカス)と成長の遅い種(青:パラユーキータ・グラシアリス)が存在。