用語集
ADP(エーディーピー):アデノシン二リン酸
ATP(エーティーピー):アデノシン三リン酸
アクチン:アクチンフィラメントを形作るタンパク質
アクチンフィラメント:タンパク質の複合体
横紋構造(おうもんこうぞう):筋繊維を構成するアクチンとミオシンが規則正しく並ぶことでみられる模様
解糖系(かいとうけい):糖の代謝経路
筋芽細胞(きんがさいぼう):単核の細胞、集まって筋繊維となる
筋原線維(きんげんせんい):筋繊維内の微小な繊維
筋節(きんせつ):魚類の体側筋に見られる層状構造
筋繊維(きんせんい):筋細胞のこと、筋肉を構成する線維状の細胞
軽鎖(けいさ):タンパク質が大小2つの基本単位で構成されている場合の分子量の小さい方
酵素(こうそ):タンパク質性の触媒
サイトゾル:細胞質から細胞小器官を除いた部分
サルコメア:筋原線維の構造および筋収縮の単位
重鎖(じゅうさ):タンパク質が大小2つの基本単位で構成されている場合の分子量の大きい方
速筋(そっきん):すばやく収縮する筋肉
血合筋(ちあいきん):血合肉、魚類に特有の筋肉
遅筋(ちきん):ゆっくり収縮する筋肉
ポリペプチド鎖:アミノ酸がペプチド結合によって直鎖状につながったもの
ミオシン:タンパク質の1種
ミオシンフィラメント:ミオシンが繊維状に結合したもの
リン酸:リンのオキソ酸の1種
字幕
1
00:00:05,605 --> 00:00:12,379
筋肉と筋肉のタンパク質について
簡単に説明させていただきます
2
00:00:12,379 --> 00:00:16,49
筋肉は運動器官です
3
00:00:16,49 --> 00:00:23,23
ご存知のように 哺乳類の骨格筋は
骨と骨をつなぐ(非常に大きな長い器官です)
4
00:00:23,23 -->
00:00:26,226
骨と(筋肉が)つながっている部分は結合組織
5
00:00:26,226 --> 00:00:31,64
コラーゲンでできた腱で
つながります
6
00:00:31,64 --> 00:00:35,669
腱と腱の間が
筋組織ということになります
7
00:00:36,770 --> 00:00:45,145
筋肉の細胞 筋細胞は
腱からもう片方の腱までの
8
00:00:45,145
--> 00:00:48,815
非常に長い細胞になります
9
00:00:48,815 --> 00:01:03,263
もともとは 小さな単核の筋芽細胞が融合して
長い筋細胞になります
10
00:01:04,631 --> 00:01:12,205
筋細胞は
別名 筋繊維とも呼ばれます
11
00:01:12,205 --> 00:01:20,613
筋繊維の中に
さらに 細い筋原繊維が
束になって入っています
12
00:01:20,613 --> 00:01:25,585
横紋筋の筋原繊維には
横紋構造(しま模様)があります
13
00:01:25,585 --> 00:01:27,454
サルコメア構造といって
14
00:01:27,454 --> 00:01:33,693
アクチンフィラメント ミオシンフィラメントが
互い違いに配置しています
15
00:01:33,693
--> 00:01:35,962
筋肉が収縮するときには
16
00:01:35,962 --> 00:01:39,966
ミオシンフィラメントの間に
アクチンフィラメントが滑り込むようにして
17
00:01:39,966 --> 00:01:45,305
サルコメアが短縮することによって
(筋肉が)収縮します
18
00:01:45,305 --> 00:01:50,610
そのとき
ATP(アデノシン三リン酸)が
ADP(アデノシン二リン酸)と リン酸に分解されて
19
00:01:50,610 --> 00:01:55,15
化学エネルギーが
運動エネルギーに変換されます
20
00:01:55,15 --> 00:02:05,392
このような基本的な事項は
哺乳類でも魚類でも同じです
21
00:02:05,392 --> 00:02:10,797
さらに無脊椎動物にも横紋筋はあり
22
00:02:10,797
--> 00:02:18,571
非常に原始的な
軟体動物や節足動物には もちろん
23
00:02:18,571 --> 00:02:23,109
刺胞動物などにも 横紋筋はあります
24
00:02:23,610 --> 00:02:29,249
基本的にはサルコメア構造をもって
筋肉が収縮しています
25
00:02:29,249 --> 00:02:35,755
今回の実験では
魚の筋肉から
アクトミオシンというタンパク質を作ります
26
00:02:35,755 --> 00:02:45,732
ミオシンフィラメントは ミオシンの分子が
たくさん束になって できたものです
27
00:02:45,732 --> 00:02:49,436
(アクトミオシンは) ミオシン分子の一つ一つが
アクチンフィラメントに結合して
28
00:02:49,436 --> 00:02:54,374
複合体を作ったような
巨大な分子の複合体です
29
00:02:55,542 --> 00:03:00,747
その(アクトミオシンの)溶液を
精製します
30
00:03:00,747 --> 00:03:07,887
また アクチンフィラメントやミオシンフィラメントの
周辺の部分(サイトゾル)にも
31
00:03:08,254 --> 00:03:11,825
タンパク質が
たくさん存在しています
32
00:03:12,125
--> 00:03:19,399
たとえば (筋肉の)収縮のエネルギー源となる
ATPを作るための解糖系の酵素や
33
00:03:19,399 --> 00:03:25,538
筋肉の中に 酸素を蓄えておくための
ミオグロビンなど
34
00:03:25,538 --> 00:03:29,642
そのようなものが周辺に漂っています
35
00:03:29,642 --> 00:03:34,214
そのようなものが
含まれた部分を抽出して
36
00:03:34,214
--> 00:03:38,918
どんなものが含まれているか
分析していくという操作を行います
37
00:03:38,918 --> 00:03:47,927
魚類の筋肉も微細な横紋筋の構造は
哺乳類と同じになります
38
00:03:47,927 --> 00:03:52,198
一番特徴的な違いは
筋節(きんせつ)というのが あることです
39
00:03:52,198
--> 00:04:00,674
魚を焼いたり煮たりすると 肉がぽろぽろと
部分部分に分かれてきます
40
00:04:00,674 --> 00:04:02,742
その一つ一つが
筋節です
41
00:04:02,742 --> 00:04:09,416
筋節と筋節は
コラーゲンの薄い膜で 接着されていて
42
00:04:09,416 --> 00:04:14,387
体側全体が
1つの大きな筋肉のように
ふるまえます
43
00:04:14,387 --> 00:04:20,627
そのうえで ある程度の柔軟性を持っているという
形がとれるようになっています
44
00:04:20,627 --> 00:04:25,532
この図は
ブリの体側筋の断面です
45
00:04:25,532 --> 00:04:28,168
右側が
筋節の模式図です
46
00:04:28,168
--> 00:04:33,206
(体側筋は) 非常に複雑な形をした筋節が
たくさんくっついて できています
47
00:04:33,206 --> 00:04:40,947
魚類の筋肉で 特徴的なのは
血合筋と普通筋に 分けられることです
48
00:04:40,947 --> 00:04:46,653
血合筋は表皮の下に近い部分にあり
49
00:04:46,653 -->
00:04:51,791
見た目も食べた感じも
普通筋と 全然違います
50
00:04:51,791 --> 00:04:59,199
(血合筋も)アクチンとミオシンに富んだ
横紋構造を持った筋肉になります
51
00:04:59,199 --> 00:05:07,474
(普通筋に比べて) 血合筋は毛細血管が多く
水分が多いという特徴があります
52
00:05:07,474 --> 00:05:10,43
中に含まれているタンパク質についても
53
00:05:10,43
--> 00:05:13,13
ミオシンとアクチンは
血合筋と普通筋のどちらにも含まれますが
54
00:05:13,13 --> 00:05:21,287
そのミオシンやアクチンの細かな構造
(たとえば)アミノ酸の配列などが異なります
55
00:05:21,287 --> 00:05:28,428
色の違いの主たる原因は
血合筋の毛細血管が発達していることに加え
56
00:05:29,362 --> 00:05:39,339
筋肉の色素である
ミオグロビンが 血合筋に多いことが挙げられます
57
00:05:39,339 --> 00:05:47,213
(普通筋と血合筋は) 色や形が違うだけでなく
収縮に関する特性も違います
58
00:05:47,213 --> 00:05:54,521
例えば
普通筋のほうが
収縮する速度は大きいということが知られています
59
00:05:54,521 --> 00:05:58,725
血合筋の部分は あまり収縮速度が
大きくないけれども
60
00:05:58,725 --> 00:06:04,731
多くの酸素を保持するために
ミオグロビンが たくさん含まれており
61
00:06:04,731 --> 00:06:12,305
普通筋とは特性を変えて
役割分担をしていると
考えられています
62
00:06:12,305 --> 00:06:20,280
血合筋は ミオグロビンも多く
収縮速度も小さいということで
63
00:06:20,280 --> 00:06:25,85
哺乳類でいうと 血合筋は遅筋(赤い筋肉)
64
00:06:25,85 --> 00:06:33,626
普通筋は速筋(白い筋肉) に
相当すると考えられています
65
00:06:33,626
--> 00:06:42,869
速筋の方は瞬発力があり 大きいです
遅筋は 持久力が高いといわれています
66
00:06:42,869 --> 00:06:45,638
(普通筋と血合筋に)
含まれるタンパク質は
67
00:06:45,638 --> 00:06:49,142
似てはいますが
全く同じではありません
68
00:06:49,142 --> 00:06:53,279
ミオシンというのは
このような形をした分子です
69
00:06:53,279
--> 00:06:57,584
分子量50万という
非常に大きなタンパク質です
70
00:06:57,584 --> 00:07:06,993
重鎖2つ 軽鎖4つ 合計6つのポリペプチド鎖が
1つのミオシン分子を作っています
71
00:07:07,360 --> 00:07:10,463
さらに ミオシン分子それぞれが
72
00:07:10,463 --> 00:07:17,904
長く伸びた
尾部(Tail)同士で
くっつき合って ミオシンの束を作ります
73
00:07:18,171 --> 00:07:23,643
それがミオシンフィラメントと呼ばれ
横紋筋の中に 存在している状態になります
74
00:07:23,643 --> 00:07:31,885
この図はミオシンの重鎖について
アミノ酸配列を示したものです
75
00:07:32,118 --> 00:07:36,189
上の方がN末端
76
00:07:36,189
--> 00:07:38,324
右下がC末端です
77
00:07:38,324 --> 00:07:43,997
約1940個のアミノ酸が
つながってできています
78
00:07:43,997 --> 00:07:48,735
(ミオシン分子の)頭部の
洋ナシの形をした方がN末端です
79
00:07:48,735 --> 00:07:51,137
尾部がC末端です
80
00:07:51,137
--> 00:07:57,844
ここで示したアミノ酸配列は
何行にも分かれています
81
00:07:57,844 --> 00:08:00,280
それぞれの行が
さらに2つに分かれています
82
00:08:00,814 --> 00:08:05,685
上の方がゼブラフィッシュの普通筋の
ミオシンの重鎖
83
00:08:05,685 --> 00:08:10,690
下の方が血合筋の
ミオシン重鎖です
84
00:08:11,157
--> 00:08:17,30
血合筋のミオシン重鎖は
普通筋ミオシン重鎖と同一の場合 「・」で示しています
85
00:08:17,30 --> 00:08:23,670
違うところは 1文字の
アミノ酸の略号を入れています
86
00:08:23,803 --> 00:08:28,675
このように 共通しているところが
たくさんありますが
87
00:08:28,675
--> 00:08:31,111
違うところも
たくさんあります
88
00:08:31,811 --> 00:08:39,552
約1940個のアミノ酸のうち 20%以上が
普通筋と血合筋で違います
89
00:08:39,552 --> 00:08:45,959
青色で示したのは 頭部のアミノ酸配列
赤色で示したのは 尾部のアミノ酸配列です
90
00:08:45,959
--> 00:08:53,99
頭部はATPを分解する作用の
酵素活性を持っています
91
00:08:53,99 --> 00:08:58,638
アクチンと結合したり 解離したりして
アクチンフィラメントを手繰り寄せるのも頭部の役割です
92
00:08:58,638 --> 00:09:06,713
こうしたアミノ酸配列の違いが
アクチンとミオシンが滑り合う速度の違いとなり
93
00:09:06,713
--> 00:09:13,19
血合筋と普通筋の特性の違いに
関わっていると考えられています
94
00:09:13,19 --> 00:09:15,689
具体的に
どのアミノ酸が どう違っているから
95
00:09:15,689 --> 00:09:21,161
収縮が 遅いとか速いとかといった
細かいところまでは まだ分かっていませんが
96
00:09:21,161
--> 00:09:26,766
こういう(アミノ酸配列の)違いが
筋肉の特性の違いにまでつながっています