セクションアウトライン

    • 濾過した環境DNAを抽出し、ウナギ特異的なプライマーを使って定量PCRを実施しました。

      予想した結果は、絶食・低水温(NFL)、絶食・高水温(NFH)、給餌・低水温(FL)、給餌・高水温(FH)の順で濃度が高くなると思いましたが、実際は給餌・低水温(FL)で最も高い値を示しました。


    • 絶食状態で高水温の環境DNA濃度が低水温より高いのは、高い水温による代謝の変化で分泌量が増えたからだと考えられます。

      給餌中、低水温の濃度が高いのは、長期間の絶食の後の給餌で消化機能が活発に動き、DNA放出量が増えたのが原因と推定されます。

      過去の研究で、ウナギは絶食期間中に栄養吸収遺伝子 (PEPT1) および 消化酵素 (Trypsinogen)の発現が上昇したという報告があります。


    • 一般線形モデルで解析した結果、給餌の有無 (Feeding) と水温 (Temperature) は両方とも環境DNA濃度に影響を及ぼしました。
      また、給餌と水温の交互作用 (Fed : Temp) も認められました。


    • 一方で、濾過量 (Volume) は環境DNA濃度に影響を及ぼしていないという結果となりました。
      実際にデータをみてみると、同じウナギを同じ環境で飼育して同じ量を濾過しても、サンプル間の偏差が激しい実験区があることが分かります。

    • つまり、水温や塩分と違って水中の環境DNAは均一ではなく、間違った解析を避けるためには複数のサンプルを取ることが大事です。

    • 自然界での環境DNA調査では、水槽内よりも複雑な要因が関わります。

      生物から放出されたDNAは、生物的(環境中の微生物、細胞外酵素など)かつ非生物的(水温、塩分、pH、光、酸素など)影響により分解速度が異なり、また放出元からの移動距離によっても濃度が変わるからです (Barnes et al., 2014; Deiner & Altermatt, 2014) 。

      環境DNAの濃度で生物量を推定するには注意が必要です。