セクションアウトライン

    •  多くの魚は、捕食者の回避、高い摂餌効率、繁殖機会の向上などの理由から、群れを形成する。魚類の群れ行動や個体間の関係については,様々な研究が行われている。流体力学的な観点からは,群れで泳ぐと個体で泳ぐよりもエネルギー効率が向上する。

    •  コンピュータ技術の発展に伴い、水生生物の遊泳メカニズムの研究に数値流体力学(CFD)を応用することが多くなっている。この方法は,空間を多数の小さな要素に分割し,各要素の基本流体方程式を数値的に解いて近似解を得るものである。

    •  生きた魚の群れについては,ヨーロッパスズキ(Dicentrarchus labrax)は,単独遊泳時よりも群れでいる時の方がエネルギー消費量が少ない。しかし,生きた魚の実験では,魚体に作用する力を詳細に分離して測定することは不可能である。

    •  本研究では、サンプル魚からサケ科魚類の遊泳運動を導出し、その運動を3次元矩形板魚体モデルに適用して、体側面における圧力分布を評価した。魚体モデルの翼断面には、NACA(National Advisory Committee for Aeronautics)4桁シリーズを使用した。これは上下対称の翼型であり,これまでの研究でも魚体モデルとして使用されている。ウナギは体全体が波打つように動くanguilliform,マグロは尾だけが振動するtunniform,サケ科は体の半分が波打つように動くsubcarangiformである。

    •  本研究では,流体力学の観点から CFD 解析を行い,魚体周りの流れ場と遊泳効率を評価することで,魚群における並列泳の効果を明らかにすることを目的とした。平石らは,ニジマス(Oncorhynchus mykiss,サケ科)の遊泳運動を解析し,数式で表現している。Videler and Hessは,セイス(Pollachius virens)とサバ(Scomber scombrus)の遊泳運動について検討し,その結果を発表している。我々は、サケ科魚類の遊泳運動の画像を解析した。泳ぎを定式化し,CFD 解析により魚体モデルに作用する流体力 を算出した。体側波動関数を CFD に適用した例はいくつかあるが,その横方向の振れ幅は単純である。使用した体表波動関数は,尾端に近づくにつれて単純包絡線が大きくなるような振幅を有していた。平行移動が遊泳効率に及ぼす影響を確認するため,魚体モデルに作用する抗力と推力を抽出して遊泳効率を計算し,近接距離を変えて比較するとともに,魚体周りの流れ場についても検討した。