セクションアウトライン

    •  魚類が群れを形成する理由は様々である。しかし、魚の群れのエネルギー効率を向上させる流体力学的なメカニズムは、まだ解明されていない。また、実際の遊泳運動に基づいたシミュレーションによる魚類モデルの例は少なく、既存のモデルでは動きが単純である。

       そこで、本研究では、ビワマス(サケ科魚類)の遊泳挙動を画像解析により解析し、その遊泳運動を定式化した。さらに、定式化した遊泳運動を用いて数値流体力学解析を行い、実際の魚の遊泳運動で魚体モデルに作用する流体力を求めた。計算された周囲の流体力から平行遊泳時の魚体モデルの遊泳効率を求め、近接距離を変化させて比較した。

       また、魚体モデル周囲の流れ場についても検討した。2匹の魚モデルが平行に泳ぐ場合の遊泳効率は、モデルの全長をLとしたとき、0.4Lの距離で離れると約10%向上することがわかった。さらに、魚体後方の流れ場を同位相と逆位相の条件下で、個体間距離0.8Lと1.2Lで調査した。2個体の鼻の中点から0.5-2.0Lの距離範囲における見かけの流速は,遊泳速度よりも小さかった。魚体模型の圧力分布では、尾びれで圧力が上昇していた。興味深いことに、尾柄に似た圧力分布マップが得られた。負の推力を避けるためには、今回得られた圧力分布マップのように、体の後部を細くする必要がある。