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  •  海藻類や海草類の群落は藻場と呼ばれ,沿岸域に形成されます。特に,コンブ類やホンダワラ類などの大型の褐藻類が構成する藻場は(下図1〜3),窒素や炭素などの無機物から有機物を合成する一次生産能力が高いうえに,複雑で立体的な空間を海底に形成します。これらのため,藻場は水産有用種を含む多種多様な生物に棲家として利用されます(下図4〜6)。最近は,海洋において光合成を通じて植物に吸収される炭素であるブルーカーボンとしても注目されています。日本では,古くから積極的に海藻類が利用されているだけでなく,ウニ,アワビ,サザエなどの藻場に生息する磯根資源を対象とした漁業も活発に行われています。藻場は,沿岸域の多様性を支えるだけ場所として重要なだけでなく,人類の生活と密接な生態系でもあるため,積極的に保全していく必要があります。