2018年の観測中には、低気圧が通過し、4日ほど強い北風がベーリング海峡付近で観測されました。この低気圧通過の前後において、ベーリング海峡中央付近の南北ラインの海洋構造を比較したところ、低気圧通過に伴い、成層強度が通過前と比べて1桁大きくなっていることが示されました(図4)。これは、北風の卓越によって西向きのエクマン流が生じ(北風が吹くと、海洋表層ではエクマン流と呼ばれる西向きの流れが生じることが知られています)、ベーリング海峡中央付近の表層にアラスカ本土沿岸に存在するアラスカ沿岸水が輸送されたためと示唆されました。

図4:2018年、ベーリング海峡付近における嵐通過前後における成層強度(図中ではSIと表記)の変化。SI(T)は水温による成層強度、SI(S)は塩分による成層強度を示す。