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    • 2013、2017、2018年で成層強度を比較したところ、冬季海氷面積が過去最小を記録した2018年の初夏は、全体的に2013、2017年より成層強度が小さいことが示されました(図2)。これは、2017/2018年の冬季の海氷面積が極端に小さく、海面への淡水供給が弱化、さらに底層が高温低塩分化したことが原因と考えられます。この傾向は、セントローレンス島南西部(海域A)、北部(海域B)で顕著でした(図3) 。例えば海域Bでは、2018年の成層強度は、2017と比べて1桁以上小さい値となっていました。しかし、アラスカ本土に近い海域C、Dにおいては、成層強度の経年変動は小さいことが示されました。アラスカ本土沿岸では、表層に高水温・低塩分のアラスカ沿岸水が毎年観測されており、その存在が強い成層をもたらしていると考えられました。以上の結果から、2017/2018冬季の最小海氷面積が、北部ベーリング海の成層強度に与える影響は、アラスカ沿岸水の影響が小さい西部海域(海域A・B)に限られることが示され、海氷分布の成層強度への影響は一様ではないことが示唆されました。


      図2:初夏における成層強度の分布(赤色ほど成層が強い)。



      図3:海域A〜Dにおける成層強度(図中ではSIと表記)の経年変動。SI(T)は水温による成層強度、SI(S)は塩分による成層強度を示す。