マルチプルコアラーの概略図を図3に示します。やぐらのような形状をした金属パイプ製の枠(以下、「やぐら」)の内部に、「採泥管ユニット」を装着する「昇降部」が収められています。各部作動の詳細は後章に詳しく示します。昇降部には底質の硬さに合わせて重さを調節する重錘を取り付けることができます。一枚が12㎏の鉛製の板を左右2か所の取り付け部に均等になるように、最大で片側10枚を取り付けられます。
図4に「採泥管ユニット」の詳細を示します。「採泥管ユニット」は掛け金のついた金属製のリング(コアサポーター)を用いて「採泥管支持枠」(以下、「アーム」)に「採泥管」を固定したもので、最大8ユニットを昇降部に取り付けることができます。マルチプルコアラーの名前の由来はここで紹介した採泥管ユニットを複数本取り付けられることにあります。採泥管には、採取される堆積物および直上海水をはっきりと視認できるよう、ポリカーボネート製の透明な筒が用いられます。アームは昇降部に採泥管を取り付ける治具だけでなく、採泥管に蓋をする機構を備えています。
昇降部を支える金属パイプは中空のシリンダーパイプとピストンロッドで構成され、注射器のような構造をしています。採泥器が海底に到達して昇降部が降下する際に、シリンダー内に満たされている海水がピストンロッドの中の細管を通って押し出されます。この時、シリンダー内の海水の出口となる穴が小さいため、昇降部をゆっくりと降下させる水圧が生じます。この機構はハイドロリックダンパーと呼ばれ、マルチプルコアラーの特徴である攪乱の少ない採泥を実現させています(図5)。