緊急車両が近づくときと遠ざかるときとでサイレンの音が違って聞こえる現象で説明されるドップラー効果を利用して対象の移動の様子(速さや向き)を計測する機器を一般にドップラーソナーといい、特に海水の流れを計測するものはドップラー流速計(ADCP: Acoustic Doppler Current Profiler)と呼ばれます。船底装備型ADCPを用いた航走観測によって、海中の流れ場の鉛直分布を連続的に計測することができます(図2)。
図2 ADCPの航走観測によって得られる潮流ベクトル図
ある周波数の音波を発信し、移動している物体によって散乱をうけるときに生じる周波数の変化量(ドップラーシフト)を計測することによって、その物体の移動の速さを求めるのがドップラーソナーの基本原理です(図3)。ADCPは3つ以上の異なる方向に音波を発信し、海水とともに移動しているプランクトンなどの粒子によって散乱されるときに生じるドップラーシフトの違いを捉えることで、三次元的に複数の層の海水の動きを計測します。
図3 ドップラーシフトの概念図