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    • 太平洋夏季水は、ベーリング海峡を通過した後、そのまま北極海海盆域(水深が数千メートルに及ぶ海域のこと)に輸送されるのではなく、陸棚域であるチュクチ海において太陽光によって加熱されます。この加熱のことを太陽放射加熱と呼びます。太陽放射加熱は太陽放射の強い南方で大きいだけでなく、太平洋夏季水の主要北上ルートであるアラスカ本土沿岸付近で大きいことが見てとれます。これは、チュクチ海の海氷が減少した結果、アルベドが小さくなり、海洋に熱が入りやすくなったためと考えられます。

      アルベドとは、入射光に対する反射光の比のことです。海洋が氷に覆われているとき、太陽光の多くは反射され、アルベドは1に近い値をとります。海洋が氷に覆われていないとき 、太陽光のほとんどは海洋に吸収され、アルベドは0.1以下の値をとることが知られています。


      1999-2015年で平均した5-9月の太陽放射加熱積分値(108 J m-2)。

      Tsukada, Ueno et al., Polar Science (2018)から抜粋。