容量器具使用法の実習
章节大纲
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実験では、試薬や溶液の必要量を正確に量り取ったり、迅速に分注したりする技術が必要となる。ここでは、生化学や分子生物学の実験で多用されるメスピペット(1 mL)およびマイクロピペット(10、20、200、1000 mL)について使用法を学ぶ。
(1) メスピペット
先端を細く絞ったガラス管に、目盛りの付いた構造で、ホールピペットと異なり、任意の体積の液体を量り取ることが出来るが、精度はホールピペットに比較して劣る。液体を所定の体積ずつ、複数の容器に連続して分注する際などに用いると便利である。先端まで目盛りの付いた「先端目盛型」と、先端部に目盛りのない「中間目盛型」があるが(下図)、後者では、吸い上げた全量を吐き出すやり方での使用はできない。口で吸引し、人差し指で液の流出を調節するが、人体に有害な液体や、微生物の培養液等を取り扱う場合は、安全ピペッターや電動ピペッターを用いる。
体積を正確に量り取るために、標線に液面を合わせる際や、液を受器に流出させている間は、ピペットの先端を容器の内壁に接触させておかなければいけない。また、先端の欠けたピペットは使用しない。
メスピペットの取り扱い方(動画)【実験1】メスピペット(10 mL)の検定
(a) 受器として、50 mLのプラスチックチューブを電子天秤の秤量皿にのせ、TAREボタンを押して、表示をゼロにする。
(b) 受器を秤量皿から降ろし、メスピペットで純水を1.00 mL受器にとって、秤量皿にのせ、量り取った水の重量を読み取って記録する。
(c) (a)および(b)の操作を合計3回行って、平均値を求める。
(d) 5.00 mLおよび10.00 mLについても同様の測定を行う。
(e) メスピペット(10 mL)の公称誤差は、一般に±0.1 mLである。自班の測定結果はこの誤差範囲に収まっているか確認せよ。また、量り取る体積によって誤差が変化する傾向はあるか、ある場合はその要因を考察せよ。
電子天秤の使い方(動画)(2) マイクロピペット
ここでは、0.1 mLから1 mL程度の液体を量り取ることができる機械式のピペットを指す。内部にピストンとシリンダーがあり、ピストンの可動範囲を精密に調節することで、任意の体積の液体を量り取ることが出来る。先端にピペットチップと呼ばれる使い捨てのノズルを装着して用いる。極微量の液体を正確に、無駄なく取り扱えるので、分子生物学や生化学の実験で多用される。しかし、不適切な使用を行うと、内部の部品を容易に劣化させ、大きな誤差を生ずるようになる。そのような状態になっても外見は正常なので注意が必要である。また、ピペットチップより上側の部分は、洗浄せずに繰り返し使われるので、この部分を介して試料や試薬の汚染が起こりやすく、厳重な注意が必要である。
※ピペットチップより上側の部分を、容器に接触させない。
※ピペットチップより上側に、絶対に液を吸い上げない。
※先端を上に向けない。
マイクロピペットは内部に樹脂や金属製の部品があり、これらを腐食する蒸気を発する有機溶媒や、揮発性の強酸、強塩基等の取り扱いに用いてはならない。
マイクロピペットの説明(動画)
マイクロピペットの操作方法(動画)【取り扱い方】以下の下線部を守らないと、本体内部に液体を吸い上げることになります。
(a) 容量の設定
ダイアルを回し、希望の容量に合わせる。容量を増やすときは、いったんその目盛りを少し超えるまで回し、その後、希望の目盛りに合わせる。容量を減らすときは、直接その目盛りに合わせる。設定可能範囲を超えて(0 mL以下や最大容量を大きく超える容量)にダイアルを回そうとすると、破損するので、絶対にしないこと。
(b) ピペットチップをしっかりと装着する。
(c) プランジャー(ピストン)は2段階に押し込めるようになっていて(図3)親指で操作する。a→bまで押し込んだ状態で(この時絶対にcまで押し込まないこと)、量り取る液体にチップの先端を入れる(深さ1~3 mm程度;図4-①)。
(d) プランジャーを押さえる力を弱め、バネの力で、b→aまでゆっくり(重要!)戻すと設定量がチップ内に吸引される(図4-②)。
(e) 受器の内壁に、チップの先端を接触させ、プランジャーをゆっくり(特に粘度の高い液体の場合重要)a→bまで押し込んで、液体を吐き出させる(図4-③④)。
(f) ピペットチップの先端に残った液は、プランジャーをさらにcまで押し込むことで、排出させる(図4-⑤)。排出後、プランジャーを押さえる力を弱め、ゆっくりとaの位置まで戻す。この時、チップの先端は受器の液体の液面より上になければならない。
(g) ピペットチップ廃棄容器の上で、イジェクトボタンを押して、チップを取り外す。(図4-⑥)してはいけない操作の例(動画)【実験2】マイクロピペットの検定
(a) 10 mL、20 mL、200 mL、並びに1000 mLのマイクロピペットについて、【実験1】の要領で検定を行う。検定に際しては、マイクロピペットの製造番号を記録せよ。また、10 mLおよび20 mLのマイクロピペットについては、受器として0.2 mLマイクロテストチューブを用い、0.1 mgの桁まで測定できる電子天秤を使用する。また、200 mLのマイクロピペットについては、受器として1.5 mLマイクロテストチューブを使用する。いずれも、秤量に際しては、ふたを閉じること。設定容量は以下の通りとし、各容量について、3回測定し、平均値を求めよ。
Aグループ:10 mLマイクロピペット:1.0、5.0、10.0 mLBグループ:20 mLマイクロピペット:2.0、10、20.0 mL
Aグループ:200 mLマイクロピペット:20、100、200 mL
Bグループ:1000 mLマイクロピペット:100、500、1000 mL
(b) 以下(太線内)は本実験で用いるマイクロピペットの公称誤差である。自班の測定結果が公称誤差の範囲に収まっているかどうか確認せよ。