イオンクロマトグラフィーの利用例(降水中のイオン成分測定)を下に記します。空から降ってくる雨粒には、様々なイオン成分が溶け込んでいます。自然由来としては、硫酸イオン(火山や海洋植物が発生源)、カルシウムイオン(炭酸カルシウム鉱物が発生源)、ナトリウムや塩化物イオン(海水の塩類が発生源)があります。人為汚染物質として、硫酸(石炭燃焼由来)や硝酸(自動車排ガス由来)などがあります。大気の汚染状況や気象現象を理解するにも、雨粒中のイオン成分を調べる必要があります。雨水を集めて、ろ過してから、イオンクロマトグラフに試料水を導入します。
① イオンクロマトグラフの陰イオン分離カラムには、常に弱アルカリ性の溶離液を流しています。試料水が導入される前にイオン交換樹脂の表面を水酸化物イオンで覆っておくためです。
② カラムより上流から試料水を導入します。下の絵の青色で塗ったところが試料水です。試料水には水酸化物イオン(OH-)はあまり含まれず、塩化物イオン(Cl-)や硝酸イオン(NO3-)が含まれます。これらを下流のイオン交換樹脂カラムで分離します。
③ 塩化物イオン(Cl-)や硝酸イオン(NO3-)を含む水がカラムに入ると、樹脂との吸着力が弱い塩化物イオン(Cl-)は先に流れ、吸着力の強い硝酸イオン(NO3-)は遅れて流れます。
④ 試料水に含まれるイオン成分よりも、先にでてくるのが、試料水の水成分です。イオン交換樹脂に吸着されることなくを素通りするからです。
⑤ 試料水の水成分が流れた後は、再び溶離液(弱アルカリ性)が流れてきます。試料水に含まれていた塩化物イオン(Cl-)、硝酸イオン(NO3-)の順に分離されて、溶離液とともに流れ出てきます。
⑥ 試料水のイオン成分が流れ出た後は、再びイオン交換樹脂が水酸化物イオン(OH-)に覆われるので、次の分析が可能な状態になります。