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    • 有効数字と精度について

        環境分析化学では、とりわけ精度管理が重要視されます。例えば、大気や海水中のCO2測定の精度について考えてみましょう。産業革命以降、人間がせっせとCO2を大気中に放出したおかげで、大気中CO2の全球濃度は100年足らずで280ppmから380ppmにまで上昇しました。つまり、1年で1ppmずつ増加しています。これを年率で表すと0.3% yr-1の増加率です。これは全球の年平均値のことです。都市近郊であれば、人為発生由来のCO2の変動を受けるし、植生に近ければ光合成と呼吸による季節変動の影響が大きい(下図参照)。そのような変動の激しいところでCO2を観測して年々変動を論ずるには、相当精度よく測らなくてはなりません。



      (気象庁ホームページより)


       ある場所で大気や海水中CO2を測る場合、要求される精度は、±0.3ppmレベルです。これを大気中濃度で割ると ±0.08%に相当します。

      (分析装置自体の精度はもっと高いにしても、試料採取、、分析、検量線による濃度定量まで、トータルの精度として±0.3ppmを確保したい)

       このような高精度での測定を目指すとき、何処に誤差要因があるでしょうか? その誤差がどのように伝搬して結果に影響するのでしょうか?を真剣に考えなければなりません。標準試料が本当に正しい濃度を保障してくれているのか? という根本的なところから精度管理が必要です。