Section outline

    • はじめに

       化学平衡の基本式を理解するには、熱力学の知識が必要になります。水産学部の海洋生物科学科の学生には、物理化学や熱力学はあまり馴染みがないかもしれません。しかし、生物の代謝やエネルギー獲得を考えるうえで、その基礎になるのが熱力学である。例えば、生物の酸素呼吸によって有機物1モルから得られるエネルギーは? 酸素が無くて、嫌気的な環境で硝酸呼吸になると、どれだけエネルギー効率が悪くなるのか? 嫌気的な環境での生存戦略って、面白そう。そもそも酸化的とか嫌気(還元)的ってなに? 熱力学の基礎を知っていれば、これらの問いに計算で答えることができます。

       「化学」と名のつく教科書(“分析化学”や“水圏化学”など)では、その第一章にて自由エネルギーやエンタルピーといったワードに出くわしてしまいます。真面目な学生ほど、教科書を1ページ目から読んで、基礎事項をクリアして先に進もうとします。しかし、分析化学や水圏化学の教科書を読むだけでは、これら基礎事項を理解するのは到底無理なのです。そうして1ページ目で挫折してしまう。

       要領よく先に進みたい人は、化学平衡の条件式、電気化学の基本式だけ覚えて使いこなせればよいです。真面目だけど不器用な人は、遠回りだけれど、物理化学の基礎を理解したうえで先に進む道を選びましょう。