章节大纲

    • 高潮線と低潮線(厳密には大潮最高高潮線と大潮最低低潮線)に挟まれた海浜の部分を潮間帯と呼ぶ。このたかだか2mの幅(太平洋岸での数値〜地域によってこの幅が異なる)の狭い帯状の部分には驚くほど多種多様な生物が生息しており、とくに岩礁帯の潮間帯ではそれがもっともはっきりした形で認識できる。潮間帯の第一の特徴は、12回生ずる潮の干満により、海中に没したり、空気に露出されたりすることで、そこに生息する生物はいわば、水中生活と陸上生活の両方を余儀なくされているとも言える。すぐに気づくことであるが、潮間帯の上部へ向かうほど空気に露出している時間が長く、生物帯は乾燥状態に長い間さらされることになる。反対に、下部へ行くほど海水に没している時間が長く、生物は湿った状態におかれることになる。

      このように一口に潮間帯と言っても潮間帯上部から潮間帯下部にかけて著しい環境条件の勾配が存在する。それぞれの生物は潮間帯の最も適する環境条件下にニッチを占め(もちろん生物相互の作用も影響する)、その結果、狭い幅の帯状に分布することになる(帯状分布)。帯状分布は海藻にも動物にも見られ、それぞれ乾燥に強い種類は潮間帯の上部を占め、湿った状態を好む動植物は潮間帯下部に分布する。また、この帯状分布構造は被食圧や波の強さの影響も受けると考えられる。


    • 図. 潮間帯の上部は基本的には海水が届かないが、実際には海水のしぶきがかかる場所があり飛沫帯と呼ぶ。最低低潮線より下は空気中に露出することはなく、漸深帯と呼ぶ。