意外に思われるかもしれないが,正直な気持ちをいうと,計測や計数そのものはそれほど面白いとは思っていない。魚の形態を観察することは好きなのだが,測る・数えるという作業は非常に単調で,面倒に感じることもある。個々のデータはそれだけではただの数値である。しかし,解析する段階になると,データの持つ意味が明確になり,俄然,面白くなってくる。とくに計測形質の場合,複数個体の計測値をそのまま直接比較しても違いがわかりにくく,あまり意味がないのだが,グラフにして比較すると,これまで誰も気がつかなかった違いが見えてくる場合がある(改めて 第1章の図 1.3 のグラフをご覧ください)。
データ収集自体は単調で面倒な作業だが,データの比較はこの上なく楽しく,そしてワクワクするひとときとなる。また,大量に集めた単一種のデータ解析も非常に面白い。これまで知られていなかった成長変異が見つかることがあるからである。データ解析は新知見発見の場であり,研究の醍醐味のひとつである。だからこそ,データ収集をがんばることができるのである。