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  • 「魚群探知機の日」(12月3日)制定をお祝いして

     今年から「魚群探知機の日」というのが制定されたとのこと。魚群探知機は日本の西宮市にある古野電気株式会社が,世界で初めて実用化し販売しました。その会社の創立記念日12月3日を「魚群探知機の日」として,日本記念日協会に認定を申請し,はれて認められたそうです。
    https://www.furuno.co.jp/news/general/general_category.html?itemid=1098&dispmid=1017 参照)
     私たちの研究室では,海の中を超音波で覗く魚群探知機やソナーを使って研究していますので,「魚群探知機の日」を一緒にお祝いしたいと思います。ここでは,魚群探知機について徒然なるまま書いてみたいと思います。

    • 魚群探知機の記録(エコーグラム)

       目にも見えず耳にも聞こえない超音波を使って,海の中の様子を人間に伝えるための表現方法の一つがエコーグラムというものです。下の図をご覧ください。

       

       横方向が時間,縦方向が深さ(船からの距離)を示しています。海中に物体があれば,それで音が跳ね返され戻ってきます。音を出してから戻ってくるまでの時間を測り,それに音速をかけると相手までの距離がわかります。「やまびこ」と同じ原理ですね。水中音速,空中音速それぞれどれくらいですか?また,戻ってきた音の大きさを測ることで相手の大きさなどがわかります。魚1個体が探知されるとエコーグラムには「へ」の字となって現れます。これがたくさんになると「へ」が重なり,群れになります。最近ではこのエコーグラムにもあるように,海中の魚の3次元位置や大きさを表示するものも出てきました。

      • 使う周波数(音の高さ)が変わると海中の様子が変わって見える

           下のエコーグラムにあるように,海の中に出す音の高さを変えると,同じ場所を見ていても見え方が変わります。これは生物の音響特性と呼ばれるものによります。オキアミなどの小さい動物プランクトンは,使う周波数が高くなるほどよく見えるようになります。

        • 音で生物の動きが見える

           下のエコーグラムは,周波数100 kHz(上)と25 kHz(下)で同時に収録したものです。ちょうど日没を挟んで見られたものです。両図共にV字型に現れているエコーは,直径80 cmのリング枠がついたプランクトンネットを垂直曳網している記録です。上のエコーグラムにおいて,左端の深さ160 mほどのところから水面まで何かが移動している様子が見えます。しかし下のエコーグラムでは見えません。これも音響特性による反応の違いと言えます。この生物の正体をプランクトンネットの採集物から見たところ,写真にある通り,オキアミ類やタンキャク類と呼ばれるものでした。一方,深さ60 mほどのところに「らせん状」のエコーが見られます。一体これはなんでしょう?




          • 異なる周波数のエコーの違いから生物種を推定する

             低周波数と高周波数のエコーの違いから生物種を推定し,他の方法でその推定を検証します。このためには実際に漁具を使ったりROVという遠隔操作のビデオを使います。下のエコーグラムでは,高周波数にのみ海底付近に見られる反応はオキアミ,中間にパラパラみられる反応はスケトウダラと予測しました。実際にROVで見てみると・・・・


            • 音響プロファイラによる海洋生物と海洋環境のモニタリング

               音響プロファイラは,係留式の魚群探知機です。バッテリーで駆動し,データは内部のメディアに保存されます。本機を海底に上向きに設置し,一定の周期で上向きに超音波を発射しエコーを収録します。本機のフレームにはCTメーター(水温と塩分を測定する機械)と深度計も設置しており,環境データも同時に収集しています。

               船で計測する場合と違い,24時間連続で長期間の海中情報を可視化することができるので,生物の日周行動,季節によるエコーの違い,水温・塩分の変化によるエコーグラムの様子などを調べることが可能です。今回使用した音響プロファイラは周波数38 kHz200 kHzの2周波数を備えています。ちなみに本機は,ArCSIIというプロジェクトのもと,本来グリーンランドの氷河縁辺部で,魚類をモニタリングするためのものです。コロナ禍により現地に赴けないため,練習として函館キャンパスから近い砂原町というところで試用しています。


              • 魚群探知機とスキャニングソナー

                 魚群探知機は主に船から海底に向かって超音波を送受します。一方,スキャニングソナーは,超音波を船の周りにスキャンして船から遠くにいる魚群を探知するものです。これら両者のエコーグラムをお見せします。下の動画で,左側は魚群探知機,右側はスキャニングソナーのエコーグラムです。スキャニングソナーのエコーグラムで画面のほぼ中央が自分の船の位置です。赤い塊が上の方から下に移動しているのがわかると思います。この赤い塊が魚群です。現在船は動いているので,船が魚群に近づいているのがわかります。船が魚群のほぼ真上を通過するときに,左側の魚群探知機のエコーグラムに魚群が現れるのを見ることが出来ます。この動画を見ても,スキャニングソナーの探知範囲が非常に広いことがわかります。

                 

                 


                • マルチビームソナーによる海底探査

                   扇子状の音響ビーム(ある方向に広く,それと直角方向に狭い音響ビーム)を使い,送波は船の左右舷に広いビーム,受波時は前後方向に広いビームで探知します(ミルズクロス法)。これにより送受が重なった非常に狭い範囲の海底の様子を詳細に知ることができ,海底地形や海底堆積物などを調べることができます。船の揺れや音速を補正する機能が付加されており,これらを補正して詳細な状況を把握することができます。下の図は本学附属練習船おしょろ丸にて捉えた沈船の音響画像です。

                   

                   

                  • 終わりに

                    以上,いろいろなエコーグラムや音響機器を紹介しました。20227月には本学附属練習船「うしお丸」が生まれ変わります。その船にも最新鋭の音響機器がたくさん搭載されます。音で海を覗いて,海の不思議・可能性を探求しましょう。